2010年 初冬

西丹沢

加入道山から大室山

2010/12/11

二日前の雨は丹沢に本格的な積雪をもたらしたようだ。大室山へ向かう


沢を登りきって、登山道を下る。これを繰り返しているうちに丹沢の主な稜線はあらかた歩きつくした感がある。
それでもいくつか未踏の稜線がある。そのひとつが白石峠から犬越路の道だ。この道すがらには加入道山と大室山がある。
その中でも大室山は標高1587mと丹沢山塊の静かな秀峰である。静寂な山頂は落葉樹におおわれているが、昔の丹沢の山々は何処もこのような景観であったろうと想像する。
冬近い西丹沢の静かな稜線を職場の野武さんと妻の三人で歩いた。

12月11日(土)晴れ

朝6時30分に新松田駅で野武さんと待ち合わせ。私が10分遅刻。
国道246号線の進行方向正面に真っ白な富士山。今日は快晴である。
いつもの通り最終コンビニエンスストア山北町のサンクスに立ち寄ってから西丹沢自然教室へ向かう。中川温泉を過ぎると谷の奥には檜洞丸が霧氷をまとって真っ白に見え、冬の到来を物語っている。自然教室で登山計画書を投函し用木沢出合で車を止めた。
さっそく、白石峠を目指して林道を歩き始める。ここは山の南斜面になるので風が当たらず谷全体が陽だまりのようだ。落ち葉の敷き詰められた林道には、冬の日差しが射し込んで明るい。最高のハイキング日和だなと浮き浮き気分だが、一方で妻は両手をだらりと下げ、ストックを引きずりながら歩いている。体全体が弛緩しているようで、なんだか不吉な予感・・・。妻を先頭にして隊列を組みなおす。そして林道が終わり小さな沢を渡っていたら、妻が滑ってどぼん。水深も浅くLOWAを履いていたので靴内への浸水は免れたが、私の不安はますます募っていくばかり。
妻はどぼん事件で多少は覚醒したのか、ストックを突きながら登り始めた。
白石大滝で休憩。妻に恐る恐る調子をたずねると「毎週、山に行っているから最近はずーっと疲れているのに、ぜんぜんわかっていないんだから・・・」
相当機嫌が悪い。
さっそく妻のザックの中身を私のザックに移し、歩行速度をさらに緩めるように諭して再び歩き始める。
荷を軽くした効果があったのか、なかったのか、いずれにせよガイドブックの標準コースタイムに遅れることなく白石峠に到着した。通常はガイドブックに掲載されている標準コースタイムを超過するのが当たり前の妻だからコンディションは復調したようである。
ここ白石峠は昨年の9月に水晶沢の下降時に立ち寄ったことがある。このときは肌寒い小雨模様。ガスで視界が閉ざされた白石峠は薄暗い印象だった。
ところが今日はどうだろう。雑木林の木々の葉は落ちて冬木立となり明るい日差しが射し込んでいる。しかも木々を通して富士山が真正面に見える。
とたんに元気になる妻。白石峠から加入道山まで20分ほどで登りきってしまった。さっそく加入道山避難小屋の中に入って昼食。
この小屋には布団が常備されており、窓からは陽が射し込んでポカポカと暖かい。思わず居眠りをしたくなるような居心地の良さ。さて、昼食のメニューだが昨夜妻が生協で買ってきてくれた鍋用の野菜が3パック。このものすごい量の野菜をコッフェルにぎゅうぎゅうに押し込んで少量の水で蒸すようにして茹で上げた。これをカップ麺に載せる。一度にはのせきれないので数回に分けたほどで、野菜だけで食べ応えは十分。それにおにぎりと、野武さんがもってきてくれたどら焼きをひとつづつ。
もう、おなかいっぱい。
先ほどの不機嫌さはどこへやら、明朗快活になってご機嫌な妻。女性は本当に難しい。
一時間を越える昼食タイムを避難小屋で過ごし大室山へ向かう。
一昨日、東京はつめたい雨だったが、それが丹沢では雪だったようだ。稜線の北側斜面にはしっかりと積雪が見られる。今シーズン初めて踏む本格的な雪。ゴム長靴をはいてこなかったことをちょっぴり後悔した。北風が強くて帽子をかぶっていないと耳がちぎれるように痛い。
調子の上がった妻は足取りも軽く、丸まっちい体でよいしょ、よいしょという感じでぐんぐん登っていく。やがて大室山山頂へと続く山稜の一角に到達。前を歩いているご夫婦がいる。二人ともかなり山慣れた雰囲気を漂わせている。
余程のことがない限り、かつて妻は登山道で他者を追い抜いたことはない。私は妻に言った。「すごいよ、ほかの人を追い抜くなんて初めてかも・・・」
「しかも、ご主人は写真撮影に夢中で立ち止まっているから、お母さんチャンスだよ。追い抜いちゃえ」
賀来家のファミリー登山隊では、もっとも登れない隊員と位置づけられている妻。“だって普通のオバサンなんだから仕方がないでしょ”ということで子供たちも納得しているけれど、彼女だっていつかは皆の足を引っ張らないようになりたいと心の中では思っているのだ。だからこうして順調に登ってこられた今日の彼女はご機嫌。
大室山の稜線を行く足取りも颯爽としているように見える。そしてくだんのご夫婦の脇をすり抜けるようにして前に出た時だった。ご主人らしき男性が私に声をかけてきた。
横須賀の村田さんという方だった。"賀来家のファミリー登山"の読者で、以前は息子さんたちと登っていたが、大きくなってからはご夫婦で登っていらっしゃるという。村田さんが言うには「いつか賀来さんと山の中で出会うのではないかなと思っていました」とのこと。それだけ山に通いこんでいるのだろう。村田さんは飾らない人柄で、好感の持てる楽しい会話がやり取りされた。大室山の山頂でお互いに記念写真を撮る。
大室山から犬越路へ向かう。妻は相変わらず絶好調らしくどんどん下っていく。今年、妻には奥秩父の笛吹川で夜遅くまで歩いてもらったことがあるが、その時とは別人のようだ。それを妻に告げると、妻はますます嬉しそうにしてどんどん下っていく。たまらないのが後に続く野武さんだ。大汗をかいて犬越路避難小屋へと到着した。
バーナーで湯を沸かしくつろいでいると村田さん夫婦が到着。よもやま話をする。村田さんは“素直の雪の犬越路避難小屋との出会い”を覚えていてくれた。
14時半、犬越路の避難小屋をあとにする。
途中で出会う人もいない静かな冬木立の山。絨毯のように積もった落ち葉を踏み散らしながら下っていく。
用木沢沿いの道は、かつて東海自然歩道として整備されたことがあるようで、不釣り合いなほど立派な鉄橋がある。
初冬の日没は早い。黄昏はじめた用木沢出合にたどり着くとまだ3時半前だった。
山北町の「さくらの湯」で汗を流して、新松田で野武さんと別れ帰路につく。千葉北ICには20時前に到着できたので、近くのスーパーマーケットに立ち寄る。
食料品や日用品と同じように来週の山歩きのための行動食を買い物カゴに入れている妻があった。


用木沢出合 07:53
白石大滝 09:09-21
白石峠 10:06-10:26
加入道山 10:36-11:45
大室山分岐点 12:53
大室山 13:02
大室山分岐点 13:10
犬越路 13:56-14:30
用木沢出合 15:23






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