2008年 夏

西丹沢 西沢

本棚沢

2008/06/07

本棚70m

今週は妻がPTA関連の行事、素直は山岳部の机上講習会、朋子は授業とバイト、敦子は夜勤。
一人で行く事になってチョイスしたのは西沢本棚沢。棚とは滝のことだが70mの本棚があることで有名な沢である。
実際に遡行しての感想だが、残念ながらあまりお勧めできる沢ではなかった。直登できる滝が少なく、滝の数も多くはない。美しさもモロクボ沢などに比べるとはるかに落ちる。
良い点を挙げれば、本棚の景観、静かであること、ツメが楽であることだろうか。

5月24日(土)曇り時々晴れ 後 雨

一人なので電車で行くことにした。
今まで公共交通機関で丹沢に行くとなれば新宿から小田急線を使っていた。高校生の時からそうだった。
今回は横浜、海老名、新松田というはじめてのルート。四街道始発の5時20分の千葉行きへ乗車し、千葉で5時36分発の逗子行き快速で横浜へ。横浜から相鉄線で海老名。海老名にて小田急線に乗り換え、新松田。新松田に到着したのは8時13分。
新松田に到着すると想像以上の登山客。バス乗り場周辺が登山客であふれかえっている。臨時バスが出たが車内は満員で立ちっ放しで1時間20分ゆられ西丹沢自然教室に到着した。
二台のバスから吐き出されるようにして登山客が降り立つ。私もその中の一人。もうクタクタだ。
吊橋を渡って西沢沿いの登山道を歩き、本棚の下へついた。ここまで登山道が整備されているのでハイキングの人々もやってくる。本棚を見るのははじめてだが、確かに大きな滝だ。本棚の右隣には120mという本棚を凌ぐ滝が落下している。これだけの規模の滝を滝壷から見上げることはめったにできない。この二つの滝を見物するためにだけにここを訪れてもそれだけの価値があるように思う。
ここで沢装備を整える。草付用として古いサレワのアイスハンマーを今日は持ってきている。これをハンマーホルスターに入れ立ち上がる。遡行図には左手のルンゼ状を登ると書いてあるが、それらしき踏み跡は見当たらないので自分の判断で登っていく。
ここのところ雨が続いて斜面はたっぷりと水を含み、足場は崩れやすく、登り辛い。
潅木につかまりながらルンゼの左側の稜を登り、周辺の地形から判断するにそろそろこの辺かな?というあたりでルンゼの右手の稜へトラバース。
ドンピシャリで本棚の落ち口がすぐ下に見える稜の背に出て、落ち葉の斜面を下り本棚の落ち口に立った。
落ち口のすぐ上にはF2がある。F2は右を巻くと遡行図にはあるので、右を巻こうとするが悪い。足場が崩れてヌルつき踏ん切りがつかない。ある程度まで登って行き詰まり、飛び降りようとかと思ったが、足をくじくかもしれない。苦労してクライムダウン。場所を変えてトライしたが結果は芳しくない。F2は直登した方が手っ取り早いような気さえする。対岸となる左の斜面を少し登って右側(左岸)全体を良く見ると巻き道として利用された形跡はないようだ。
遡行図の解説とは逆の左の斜面(右岸)を巻くことにする。先ほど本棚を巻いた時に下った斜面の少し上流側を登る。するとはっきりした巻き道がある。かなりしっかりと踏まれた道でかなり前から巻き道として利用されていたようだ。この巻き道はF2とF3を同時に巻くことの出来るもので私もそのまま巻く。
次はF4。大きな倒木が引っかかっている。滑りそうな倒木を利用して登る気などとてもしない。左の尾根を利用して巻く。しばらく行くとF5のナメ滝。このナメ滝は規模が小さいのでF5としてカウントするのは少々ためらわれる。
二万五千図の標高865mにある二俣に到着。これは左へいく。
さらにしばらく歩くと925m地点の二俣。この二俣は右には水流があるが左は涸れている。二万五千図に従って左へ行く。水は涸れていたがしばらく登っていくと再び水が流れ始めた。
まもなくF6。右を越えすぐにF7。
F7は遡行図にある「すだれ状滝」である。黒部の上ノ廊下にあるような岩盤の途中から染み出した水が滝になったものだ。本流のすぐ右手を水をかぶりながら登ろうとするが、黒いミズゴケでヌルヌルするのですぐにやめる。右の黒いすだれ部分を登って落ち口の上へ立つ。岩が少しもろく要注意。
沢床の傾斜が急になって980mの二俣へ。ここも二万五千図に従って左へ。水流は消え、苔むした巨岩を縫うようにしてザレた斜面を登っていく。息が切れる。
「丹沢の谷110」の遡行図にある源流部の3m滝と2段4m滝は埋もれてしまったのか確認できず。
二万五千図にある小さな支稜の標高1150mのコルを目指して登っていく。前方にそれらしきコルが見え始めた。忍耐で登っていく。
ようやっとでコルにでると、そこにははっきりした踏み跡がある。獣道ではない遡行者のたどった踏み跡である。ヤブ漕ぎを免れてホットした。ここから稜線の登山道まで15分。登山道に出たところは二週間前に妻と登ったモロクボ沢の終了点の30mほど下だった。
畦ケ丸の山頂には男性一人と若い男女がいた。山頂にあるテーブルにザックを下ろす。
山で出会った人と仲良くする方法がある。それは「疲れたな」と一言つぶやくことだ。そうすると場が和んで相手から話しかけてくれる。たまに通用しないこともあるけれど・・・。
若いカップルの女性の方がにっこりしながらお菓子を出して「これどうぞ」といってくれた。
「山が好きなんですか?」と私が言った。
「はい、本格的なのはしないんですけれど・・・。沢登りですか?」
などとポツリポツリと話す。
最後に私は
「お礼のお返しを持っていませんがありがとうございました」と言うと男性も私を見てにっこりした。
善六のタワまで25分。更にがんばって西丹沢自然教室直前の堰堤まで1時間。この堰堤で水浴びをする。これは出発前から計画していたもので、パンツ一丁になって水流に腰まで浸かり、ヘルメットを洗面器代わりにして水浴びをした。火照っていた体は急速に冷却され、汗は洗い落とされた。用意していたバスタオルで体を拭き、着替える。もちろん下着まで。このときの気分といったら最高だ。木綿のTシャツを吹き抜ける風がなんとも心地よい。
計算どおり16時20分のバスに乗車することが出来た。
今ひとつ面白みのない本棚沢だったが、最後の水浴びですべてが良い思い出になった。横浜からは成田行きの横須賀総武直通の快速電車のグリーン車でビールを呑み、ご機嫌な締めくくりとなった。

参考資料:山と渓谷社1995年発行「丹沢の谷110」  白山書房2000年発行「東京周辺の沢」


四街道 5:20
横浜 6:49
新松田 8:13--8:25
西丹沢自然教室 9:45--10:10
本棚下 10:55--11:15
本棚上 11:40--12:13
F3下 12:23
F4下 12:27
F5下 12:39
二俣(865m)左へ 12:45
二俣(925m)左へ 13:04
F6下 13:10
F7(すだれ状滝)下 13:15
二俣(980m)左へ 13:38
源頭踏み跡(1150m) 14:22
登山道(1230m) 14:37
畦ケ丸山頂 14:44--14:54
善六のタワ 15:19
西丹沢自然教室 16:15--16:20
新松田 17:40--17:54
四街道 20:37


本棚の右隣にある120m滝
二本並列して落ちている



F2
各種遡行図では右を巻くようにあるが
現在は左にしっかりとした踏み跡がある


F3
F2・F3はまとめて左を巻いた



F4
これも左の尾根状を巻く
この沢は、滝を直登させてくれない



F5
ナメ滝



F6
右を登る


F7
すだれ状の滝
ヌルミが激しく右の水流部を登る



最後のツメ
上部に見える稜線には踏み跡がある