2008年 夏

表丹沢 鍋割山 四十八瀬川

ミズヒ沢

2008/06/28

ミズヒ沢中盤の小滝群

1ケ月ほど前だったろうか?
妻とNHKを見ていたら、丹沢のハイキングを取り上げた放送があって鍋割山荘で鍋焼きうどんを食べ、やしおツツジなどをめでながら鍋割山稜をたどって塔ノ岳へいたるという映像が流れた。
ここのところ妻と沢登りに通うことの多くなった丹沢。妻にとっても丹沢は親しみのある存在になっているらしく身を乗り出して二人で観た。
いつか行ってみたいねと私が言うと、妻もうなづく。
「妻が好感を持つ山リスト」というのが私の頭の中にあるが、そのリストのかなり上位にアップされた。

6月28日(土)曇り時々雨

入梅して、ここのところ週末の天候が芳しくない。
先週は仙台、大阪、福岡、長崎と一週間出張しっぱなしで山へ行くどころではなかった。
さて今週だ。金曜日に広島日帰り出張で夜遅くに帰宅したが、明日はまずまずの天気らしい。食卓でビール(本当は発泡酒)を呑みながら、妻に「鍋割山に鍋焼きうどんを食べに行かないか?」と打診すると、あっけなくいいよとの返事。出張続きで気の毒に思ったらしい。
さっそく「丹沢の谷101」をめくって鍋割山に突き上げる沢を調べてみるとミズヒ沢がある。あんまりぱっとしない沢だが登山道を歩くよりはましだろうということでミズヒ沢を登ることにし「丹沢の谷101」をザックに放り込んで四街道の自宅を出発した。
四十八瀬川の二俣まで車で入る。
もたもた準備を整え林道を上流へと歩き始める。林道の終点には白い三菱パジェロが止まっている。小屋番の草野さんの車だろう。ボランティアで水の荷揚げをすることにして2リットルのペットボトルを2本ザックに入れる。
鍋割山へのメイン登山コースである後沢乗越へと向かう登山道からわかれて、右の沢へ入っていく。ミズヒ大滝までは明瞭な踏み跡があるのでそれをたどった。ミズヒ大滝は直瀑で直登は論外、高巻く。右手の斜面を登っていく。ブッシュはないが、登り始めの部分は足元がぬかるんで登りにくい。どんどん登っていく。一気に枝尾根の背まで登りつめた。見下ろすと下りやすそうな斜面がミズヒ沢へと広がっている。
沢底に立ってみるとどうやらF2まで一気に高巻いてしまったことに気が付いた。
この高巻きで蛭にやられた。いくつかはとったのだが、後ろの首筋についた蛭には気が付かなかった。これが後々やっかいな結果になろうとは・・・。
ミズヒ沢は岩がもろいようで、あちらこちらで崩壊が進行中である。小さなザレが左右から流れ込んで倒木も散乱している。また、磨かれた岩盤というものもほとんどない。いやらしい小滝を巻いたりしながら登っていく。
時折ばらばらと雨が落ちてくる。
しばらく行くと右側から大きく崩壊した沢が流入する。出合は砂利が堆積し、その向こうに滝が見える。
一方、本流は目の前にチョックストーンのかぶさる二段滝が見える。一段目は6mの樋状で最後の一歩が滑りやすくいやらしい。二段目は登れないので左の岩溝を登る。
次の滝は土と草が貼りついたうすら汚い滝だ。登れないので右を高巻く。
ガスの立ち込める源流部のガレを辛抱強く登っていくと傾斜はますます強くなっていく。適当なところで右手の小さな尾根へ逃げ、これを登っていく。幸いにもヤブはなく登りやすいが源頭部は傾斜が強いので息も切れる。30分ほどで後沢乗越と鍋割山をつなぐ稜線上の登山道に出た。
鍋割山の山頂は右へ登っていくとすぐである。
ガスの中に鍋割山荘が建っていた。周辺は小広い草地になっていて気持ちの良いところだ。
担ぎ上げたペットボトルを小屋に預け、さっそく鍋焼きうどんを注文。980円なり。ちゃんとした土鍋で料理されたうどんが出てきた。卵が固ゆで状態になっているし、具が汁を吸いきってしまって、下界なら文句の一つも出そうな仕上がりだが、ここは人力ですべてを担ぎ上げざるを得ない山頂の山小屋である。大切に外のテーブルにもって行き、妻と二人で一つの鍋焼きうどんを分け合って食べた。妻もご機嫌で、私としてもうれしい限りだ。
下降路は後沢乗越を経由して車まで戻った。1時間少々の楽な下山だった。

参考資料:山と渓谷社1995年発行「丹沢の谷101」


山蛭の後日談
ミズヒ大滝の巻き道で後ろくびをやられ、これが化膿した。二日後から発熱。リンパが腫れ動けなくなった。1週間ほど熱は続き、完治したのは2週間後のことだった。



ミズヒ大滝



ミズヒ大滝の巻き道


沢底へ下降する斜面



右を巻く



小滝



崩壊した土砂が積もった沢が右から流入



チョックストーン二段滝



鍋割山荘




お品書き



具が汁を吸いきってしまった鍋焼きうどん980円なり




ご機嫌な妻



下降路は歩きやすかった