2007年 秋

西丹沢 中川川

大滝沢本流(鬼石沢)

2007/09/24

中流部の小滝:妻の撮影

花崗岩が好きだ。モンブラン山群、赤石沢奥壁、屏風岩、奥鐘山西壁、廻り目平。フリクションのきいた岩肌、がっちりしたエッジ、ハーケンの歌、ヤスリのような岩肌でボロボロになった手。私の青春時代は花崗岩をよじ登ることをイメージしてクライミングを追求してきたのかもしれない。
沢も花崗岩がいい。淵の青さや苔の緑が白い岩肌と美しいコントラストを描いて、清冽な印象を与える。多少天候が芳しくなかったとしても花崗岩の明るさがマイナス面を補ってくれる。台風7号下でのマスキ嵐沢でそう思った。
今回チョイスした花崗岩の沢は西丹沢中川川大滝川本流。雨棚を遡行対象から省けば素晴らしい半日を約束してくれる好ルート。なおマスキ嵐沢は大滝川の支流にあたる。

9月24日(月)曇り

休日出勤が続いてなかなか山へいけないが、三連休の最終日に妻には丹沢日帰りという約束で4時45分四街道を出発。
高速道路は渋滞なし。
大滝橋の林道に車を止め、仕度をするが私の体調が悪い。運転していてもつらかったが出発前の装備点検をしていても体を動かしたりものを考えたりするのが億劫だ。背中がきしむように痛い。しばらく運転席の座席をリクライニングし、背を丸めるようにして休む。妻が心配そうに声をかけてくる。「だいじょうぶだ」とこたえて目を閉じる。
エンジンを切っているので、沢の音がゴーゴーと聞こえる。数分ほどそのようにして、いくぶん楽になったので出発する。
一軒屋避難小屋までは、東海自然歩道として整備されているコースなので歩きやすい。15分ほど歩くとマスキ嵐沢の入渓地点。そこから更に45分歩くと一軒屋避難小屋へ到着。昔は避難小屋というと荒れているものも少なくなかったが、最近は登山者の自然保護に対する意識の高まりや、それに伴うマナーの向上で避難小屋も掃除が行き届いているケースが多い。これにはボランティアによる奉仕活動が大いに貢献しているのだろう。小屋を愛するそのような人たちの存在に感謝せねばなるまい。
一軒屋避難小屋で沢仕度を整え、大滝沢本流沿いに遡行を開始する。沢に一歩入るとその緊張感から体調の悪さをしばし忘れる。身が引き締まっているのだろう。
遡行図にあるF2は花崗岩の滝。ホールドも豊富で慎重に登ればなんら問題はないが、万が一に備えて妻をビレイ。F3は一見して巻くことに決める。右の支沢を30mほどあがってから急斜面を潅木頼りに巻く。踏み跡が判然としなかったので別の巻き道があったのかもしれない。沢へ戻るために妻に対してロープを使用。
この後は小滝の連続地帯を越え、チョックストーン滝に到着。右の穴をくぐる。穴から這い出るところが登りにくい。
チョックストーン滝を越えると渓の中は美しい苔に覆われ、その中を美しい流れが小滝を連ねている。
体調の悪さをだましだましここまで登ってきたが、ついにダウン。小さなチョックストンが挟まった小滝の前で、ぶっ倒れるようにして横になる。こんなに調子が悪いのに私はなぜ山に登っているのだろう?
心配そうに覗き込む妻。
しばらく休んでめまいも治ったので、遡行を開始する。
小さなチョックストーンの挟まった小滝はレイバックで突破。これは面白い。ぼつぼつ倒木などが目立ち始めたところで源頭部に到達。ヤブ漕ぎなしで稜線の登山道にでた。
歯を食いしばって一時間で一軒屋避難小屋へ下り、ふらふらになりつつも30分ほどで車に帰着することが出来た。
妻に運転してもらって家路についたことは言うまでもない。


一軒屋避難小屋



F2(雨棚がF1)



花崗岩のナメがつづく



チョックストーン滝は右手の穴をくぐる



ゴーロはほとんどなく、ひたすらナメの連続



苔の中に小滝がつづく



手ごろな滝



終盤のおもしろいチョックストン小滝


9月24日
 林道駐車地点 7:20
 マスキ嵐沢出合 7:42
 一軒屋避難小屋 8:18--8:37
 チョックストーン滝 9:49
 稜線 11:25
 一軒屋避難小屋 12:27--12:42
 林道駐車地点 13:15