2010年 初夏

西丹沢 大滝沢

マスキ嵐沢

2010/06/12

最後の涸れ滝の落ち口に登りついた朋子

ノーベル平和賞を受賞したマザーテレサのことは世界中の多くの人々が知っていると思う。そして彼女がインドの最貧困地帯に身を投じたカトリックのシスターであることも。
だがマザーテレサが福者であるということをご存じの日本人はどれくらいいるだろうか。おそらく総人口の0.4%に満たないのではあるまいか。
福者とはカトリック教会で死後与えられる称号で、福者と認められることを列福という。
その列福式が2008年11月24日長崎において日本で初めて行われた。今回列福の対象となった信者はキリシタン弾圧で殉教した司祭を含む日本人188名。
ペトロ・カスイ岐部神父は大分県国東の人、原主水は臼井城主の嫡男でもあり何年も前から楽しみにしていた列福式。今は亡き祖父母や伯父伯母の願いを受け、私は母・妻・子供たちを連れて大分県中津市湯屋の母の実家へ立ち寄り列福式前日に長崎へ入った。
その夜、祈りの場となった浦上天主堂で私に声をかける人がいた。振り向くと上品そうな男性がたっていた。サレジオ会の司祭「関谷神父」であった。私のホームページをご覧いただいているということで名刺交換をして簡単なあいさつを交わし別れた。
そして縁があって今回一緒に沢を遡行することになった。

6月12日(土)晴ときどき曇り

今年初めての沢歩きである。場所はマスキ嵐沢。大滝沢の林道途中の広場で集合。カトリック幼稚園の先生MさんとTさんそして関谷神父。我が家は素直と朋子と私。総勢6名の大部隊である。こんな大人数で登るのは岳連か日山協の行事以来かもしれない。
お助け紐、ロープを積極的に使って万全の安全対策を施しつつ登っていく。私が最初に登り5人をビレイする。お助け紐、ボディ、半マスト、そして確保器具等々。沢歩きで良く使うビレイ方法を一通り使って登っていく。
お話をうかがっていると関谷神父は中学生の時にお父様に連れられて槍穂高を歩いてから山が大好きになったとのこと。しかも北鎌尾根などは3度も登り、そのうち一度はお父様と一緒だったとか。賀来家のファミリー登山も顔負けということが判明。
マスキ嵐沢の核心部「くの字」スラブ状二段滝は落ち口の直下に木が倒れ込み登りにくくなっていた。不用意にブッシュをつかみ、強引に登ろうとすると非常に危険である。
ゆっくりと歩き、湯を沸かし休む。
最後の涸れ滝10mを登り切ると穏やかな源頭部を経て稜線はすぐそこ。権現山まで一気に登る。
広い台地のように平坦な山頂。穏やかな風がブナの枝を吹き抜け、葉のすれる音が森を渡る。遠くには丹沢湖。
思い思いに腰をおろしおにぎりと冷たい水をいただく。質素な食事もコップ一杯の水も山の中ではかけがえのない天からの贈り物。
普段の生活の中であまりにも当たり前すぎて、存在すら忘れてしまっているものが私にはたくさんある。
空気・水そして命、あるいは愛されていることさえも。
そんなことをあらためて考えた一日だった。

山行が終わった峰山橋でマザーテレサ生誕100年であることを関谷神父に教えられたことを付け加えておきたい。8月26日

走行距離501km


四街道 5:10
峰山橋 7:30-7:57
マスキ嵐沢入渓点 8:13-8:38
稜線 12:21
権現山 12:36-13:23
権現山南尾根(仮称)下降
峰山橋 14:20


峰山橋にて朋子の支度を整える



入渓点でロープをザックにくくりつける素直



樋状の滝



ボディに半マスト



中盤の滝

下降は権現山南尾根(仮称)

峰山橋で暫し憩う
このあと「さくらの湯」で汗を流し家路へ