2010年 夏

西丹沢 中川川

大滝沢(鬼石沢)

2010/07/04

マスキ嵐沢へ向かう団体さん

妻の風邪の調子も今一つで咳きこんだりしている。天気予報も芳しいものではなく梅雨前線の影響で西日本では豪雨、関東地方も雷雨の予報。土曜日は様子見で買い物や山の道具の整理などで過ごしていたが、蒸し暑いもののまずまずの天候だった。
今週山へ行かないとなると二週連続で山へ行かないことになる。登山のハイシーズンを直前にしてそれはまずい。夜の天気予報を見ていると気圧配置に大きな変化はない様子なので、一人で出かけることにしてザックに荷をつめて就寝した。
場所は大滝沢(鬼石沢)。

7月4日(日)曇りのち豪雨

毎日の通勤に使用している5時44分発の快速に乗車。品川で東海道本線6時43分発沼津行きに乗り換え国府津へ向かう。国府津には7時49分到着し御殿場線の沼津行き7時58分発に乗車。谷峨到着は8時27分。9分の待ち合わせ西丹沢行きの富士急湘南バスに接続。
大滝橋到着は9時17分。
というように、非常にスムーズ。公共交通機関を利用して千葉から西丹沢へ向かうには品川・国府津・谷峨がベストのようだ。
しかしながら無人の谷峨駅前には自動販売機しかない。朝食抜きで出発した私はそのまま山へ入ることになった。
大滝橋のバス停に降り立った登山客は15名ほど。ツアー登山らしき初心者の一団のようで老若男女がワイワイと楽しそうに歩いていく。彼らの最後尾について私も歩く。
やがてマスキ嵐沢の入渓点に到着した。ツアーの団体はマスキ嵐沢を遡行するようだ。こんなに多くの人がマスキ嵐沢へ入るのを初めて見た。マスキ嵐沢はビレイの必要な滝がいくつかあるので、この大人数では相当な時間がかかるだろう。
マスキ嵐沢で他の遡行者に頻繁に遭遇することなど以前にはなかったことだ。それもヒルの影響だろう。
鹿の繁殖によりヒルの汚染地域になってしまったといわれる表丹沢の沢。西丹沢もいずれ汚染されるのだろうか。
蒸し暑い。朝食抜きで1時間の歩行はきつい。10時16分汗びっしょりになりながら一軒屋避難小屋に到着。外にしつらえてあるテーブルには先客の二人連れのご婦人。ゴム長靴をはいているところを見ると山慣れた人であることがわかる。
私は腹減ったし疲れたなぁとノロノロと草地に銀マットを敷いて遅い朝食の準備。
「どこへ行くんですか、どこから来たんですか」というような会話があってご婦人の一人が「もしかして賀来さん?」と言うではないですか。私のホームページをご覧いただいている海老名市のUさんとTさんとのことでびっくり。「ホームページより若く見える」とUさんが盛んに言う。言外に"本当は年配者のはずなのに"という意味が含まれているような気がしないでもない。「若く見える」というのは年配者にとっては褒め言葉なので「見えるんではなく、本当に若いんです」といったら爆笑。
お二人は、これから畦ケ丸と権現山の鞍部に登るという。そんな道があるとは知らなかった。権現山からは南尾根を下降とのこと。この周辺の相当な精通者のようだ。
朝食の焼きそばを食べ、のろのろと沢支度を整える。10時57分大滝沢へ入渓すべく立ち上がった。先月新調した沢靴の調子が悪い。足裏感覚がゼロで締まりが悪い。もう5mm小さいサイズが良かった。
雨続きで水量はやや多い。F2を越えてF3の前に立つ。ビレイすべき滝なので少し迷ったが登り始める。あらかた登り切ったあたりで、外形したホールドに立ちこむことがためらわれしばらく逡巡する。この場所から滝の左側を見ると杣道があることがわかる。「山と渓谷社:丹沢の谷110ルート」や「東京周辺の沢」ではしっかりとした杣道が右岸にあるというのに左岸を高巻くように記述している。おそらく杣道の存在を知らないのであろう。あきれるほどに遡行ガイドブックとはいい加減なものである。
最後の一歩を危険と判断し時間をかけて慎重にクライムダウン。相当時間をくった。左の斜面を登り杣道に出る。登りづらい斜面に多少手こずる。アイスハンマーを持ってくればよかった。
杣道は植林の為の作業道だろう。右岸(左側)に一定の高さで作業道がかなり上部まで続いている。大滝沢には三つの堰堤があるが、最初の堰堤の上まで導かれるようにしてたどり着いた。
しばらく冗長な河原歩きとなるが杣道を縫うようにすると楽だ。チョックストーン滝、大岩のある堰堤、ナメ滝、最終堰堤、苔むした露岩帯。
ヒグラシの大合唱の中をぐんぐんと高度を上げていく。以前レイバックで登った源流の滝には流木が3本立て掛けられており難なく通過。
ハアハア言いながら登っていくと水が涸れる。水涸れ地点から20mで苔むした最後の涸れ滝。これを越えると5分で稜線だという目印の滝。
帰りのバスは16時27分に乗車予定なので14時までに稜線に出れば良い。少しゆとりがあるので水涸れ地点まで戻って休憩。
カナカナカナ・・・こどものころ夏の夕暮れ時に聞いたヒグラシには物悲しい気配を感じたものだ。
涸れ滝から稜線までは丁度5分。雲が厚くなって薄暗く、まるで夕方のようだ。沢靴のまま下っていく。一軒屋避難小屋にはだれもいない。マスキ嵐沢にも。ますます暗くなってきた。
楽しみが一つある。それは峰山橋の取水堰での水浴。
ヘルメットを洗面器代わりにして頭まで水をかぶる。そして下着まで取り換える。峰山橋から大滝橋バス停までは15分だからゆっくり歩けば汗もかかない。
どんなにさっぱりするだろうかと楽しみだ。
15時35分、取水堰到着。河原に降りて銀マットを敷いていると雨が降り出した。見る見るうちに雨脚が強くなってくる。とたんに夕立のような雨。ザックの中身を大急ぎでしまい。汗まみれのままで立ち上がった。こんな豪雨では着替える意味がない。
仕方なしにバス停へととぼとぼと歩いていく。
新大滝橋トンネルの歩道は格好の雨宿り場所。ザックを枕に寝転びバスの来るのを待つ。ずぶぬれになってバスに乗り込むと運転手がビニールの袋を貸してくれたのでシートに座ることができた。バスの乗客の多くは朝方マスキ嵐沢へ入った団体だった。
こんなぬれ鼠状態で電車に乗るのは不快極まりない。さくらの湯へ立ち寄ることにして山北駅前で途中下車。水を吸ってずっしりと重いザックを肩にかけさくらの湯の1階のエレベータに乗った。先に男女が乗っていた。そして顔を見合わせてびっくり仰天。
職場の田部井青年であった。お母様と一緒に檜洞丸から犬越路を歩いてきたところだという。宝くじ的確率!
一緒に車に乗って帰ろうと誘ってくれたが、電車の方が早いし、親子水入らずには遠慮が必要だ。駅前の酒屋でビールを買って18時40分の国府津行き列車に乗り込んだ。
21時32分四街道帰着。


大滝橋バス停 8:17
峰山橋 9:31
マスキ嵐沢 9:52
一軒屋避難小屋 10:16--10:57
F2 11:05
F3 11:09--11:35
チョックストーン滝 12:27
第二堰堤 12:52
第三堰堤 13:13
レイバック滝 13:26
最後の涸滝 13:40--13:52
稜線 13:58
大滝峠上 14:26
一軒屋避難小屋 14:56-15:00
マスキ嵐 15:20
峰山橋 15:36--15:48
大滝橋バス停 16:05

JR品川・谷峨1620円、富士急湘南バス谷峨駅・大滝橋660円:富士急湘南バス大滝橋・山北駅860円、JR山北・品川1450円

周辺の記録
2009年8月1日の遡行記
2007年9月24日の遡行記


F3



心和むナメの小滝



二番目の堰堤



上流のナメ



レイバックの滝

稜線までは5分の目印となる最後の涸れ滝