2009年 夏

西丹沢

玄倉川本流

2009/6/27

残置ロープのある美しい淵

さかのぼること10年前に玄倉川の中州で幕営していたキャンパーが増水で流され13名が死亡するという痛ましい事故があった。これを境にして狂ったようなオートキャンプブームは一気に終わってしまった。そしてユーシンへと向かう玄倉林道入口のゲートも固く締められ、ユーシンロッジ宿泊利用者だけが林道を車で通行できる状態がしばらく続いていた。
さらに3年ほど前からは青崩隧道に崩落の危険があるため、車だけでなく人間の歩行も禁止だという。ユーシンの周辺はのどかで明るい河原が広がり、下地も芝生でキャンプサイトとしても素敵なところだった。
もう誰も訪れることのないユーシン。一体どうなっているんだろうと気になっていた。
玄倉川に沿って上流へ行けぬものか。ネットで調べてみると青崩れ隧道以外の隧道も通行制限をしているらしい。ゲートから玄倉川の川沿いに登るほかないのかもしれない。
左足の不具合を考えると、ほぼ水平に近いこのコースはぴったりのように思い、今週は玄倉川本流を遡ることにして5時10分妻と二人で四街道を出発した。

6月27日(土)晴れ

海老名SAで朝食を摂って玄倉林道のゲート前に8時前に到着。
沢支度を整えて、ゲート前から玄倉川の河原に降りた。広大な河原が広がっている。砂利の採取をしているようで、重機のキャタピラ痕がある。河原を過ぎると川幅が狭まりごく一般的な河原歩きとなる。透明な水を通して川底の石がゆらゆらとゆれてひかり美しい。しかしながらいささか退屈でもある。一時間半ほど河原歩きをして、川が右にカーブすると前方に大きな二段堰堤が本流をふさいでいる。非常に大きな堰堤で、近くに寄ってみたが越えられそうにない。少し戻って右の林道に這い上がれそうな涸れ沢を見つけ、これを登る。登り辛い泥の斜面を50mほどで林道に戻ることができた。林道に出てみるとハイキングしている人にであった。どうやらここまで林道は通行に障害はないようだ。ここまでの玄倉川本流はとても退屈でつまらないことを考えると、なんだか無駄な行為をしたようでがっくりくる。
気を取り直して林道を上流方面へ歩く。
20分ほど歩くと青崩れ隧道の入り口に着いた。入り口のゲートはべニア板でふさがれており侵入することは不可能だ。玄倉川本流へ下れる踏み跡があるのでそれをたどって一旦玄倉川の本流へ降り立つ。ここから見上げる青崩れは崩壊がすすんでいる。
本流の流れを渡り、対岸で流木を集めたき火をして昼食とする。うどんをゆでて釜あげにして食べる。少し昼寝などもする。
ゆっくりしすぎたかも知れない。余計な荷物はここにデポし、ザックを一つにまとめて私が背負う。しばらく河原を歩いて行くと大きな岩のブロックが点在するようになる。ところどころでは岩盤が露出し始め、ちょっと双六谷のような感じもする。20分ほどで深い切れ込みとなってモチコシ沢が左から流入する。切れ込みの奥をのぞくと滝が見える。行ってみる。モチコシ沢の大滝だ。落差60mといわれる迫力ある滝である。
玄倉川に戻る。
「丹沢の谷101」の記述では玄倉川本流はここから通過困難になるとある。谷全体が巨岩に埋め尽くされるようになり、ところどころにある小さな淵は青く澄んで陽の光にきらきらと輝いている。ただし通過は容易である。
15分ほど行くと小さなスラブ滝に突き当たった。このスラブ滝から上流へ向かって20分ほどの区間が玄倉川で最も美しく楽しい部分である。
スラブ滝は美しい水をたたえた釜をもちさらさらと水が落ちている。左側から簡単に越えることができた。
そのすぐ上に小さな淵。淵自体は非常に美しい。ラムネのビンのような色をして澄んでいる。汚らしい残置ロープが垂れているのが少々興ざめだ。ここは水際をへつるか泳ぎたい。流れはほとんどないので危険は全くないので妻に先行してもらう。左側はオーバーハングしているが水際をへそまで浸かってトラバースできた。
トイ状、ナメ風など美しい流れが連続する。美しい淵に見とれる。
そうして進んでいくと突然、谷は終わる。玄倉ダムにふさがれるのである。ダムの手前にはアッチ沢が流れ込み、林道へ容易に這い上がれることがわかった。アッチ沢の出合でバーナーで湯を沸かし妻はコーヒーを淹れる。私は緑茶。
今日はここまでだ。コーヒーを飲み終わってから、遡ってきた本流を再びたどって下っていく。一時間ほどで青崩れ下のデポに帰り着いた。不思議なことに本流の流れは干上がっており、水は全く流れていない。ほんの2時間ほど前には水が豊富に流れていたのに。
上の林道から降りてきたハイキングの人がいて、ユーシンまで行けないかと聞いてきた。「胸まで水につかって徒渉すれば行けます」と答えておいた。
荷をまとめ林道へ這い上がる。緩やかな下り坂となった林道を妻と二人でおしゃべりをしながら歩いていく。午後の陽ざしの中をゆっくり歩き車まで帰り着いた。
帰りは山北駅に隣接する「さくらの湯」で汗を流し、家路についた。

ゲート 8:16
堰堤 9:46
林道 10:02
青崩れ隧道入り口 10:21
崩れ下の玄倉川河原 10:30-11:49
スラブ滝 12:32
残置ロープのある美しい淵 12:39
玄倉ダム下 12:53−13:05
青崩れ下の玄倉川河原 14:03-14:30
青崩れ隧道入り口 14:35
ゲート 15:15


砂利採石の広大な河原を行く



清い流れだが退屈な下流部



大きな堰堤に行く手を阻まれた



モチコシ沢への切れ込み



モチコシ沢大滝



スラブ滝



美しい淵

玄倉ダム