2006年 初冬

西丹沢

檜洞丸

ツツジ新道から檜洞丸を経て石棚山稜へ
2006/12/10


ブナに囲まれた檜洞丸山頂付近は木道が整備されている



檜洞丸を知ったのは高校二年生だったから1972年かと思う。あの頃は毎晩のように登山ガイドブックを読みながら空想の山登りを行うのが日課で気がつくと夜が白々と明けていた。そんな頃に檜洞丸を知った。
「ヒノキボラマル」と読む。その呼び名にも心惹かれた。山ではなく丸だという。
「丹沢の最深部にそびえる訪れる人も稀なブナに囲まれた山」・・・と空想はふくらみ、いつの日にか行ってみたいと思っていたが機会はなかった。
そして今日、敦子と登って来た。
12月ということもあって人は少なく、天候にも恵まれ、冬枯れのブナ林で素晴らしい一日を過ごすことができた。いつの日にか新緑の頃に再訪してみたい。

12月10日(日)小雨のち晴れ時々曇り

昨日の土曜日は休日出勤だったが、遅くに帰宅して敦子に山行きを打診すると
「いいよ、レポート提出の宿題があるから夕方6時には帰りたいな」
という。
四街道を5時に出発。高速道路では小雨が続いた。
西丹沢自然教室では、どんよりとした雨雲が薄暗く低く垂れ込めているが、雨は降っていない。路面は濡れており、木々の枝にもしずくがびっしりとついている。さっきまで雨が降っていたらしい。周辺には秋の名残を感じさせるような紅葉した木々が残っていて、薄い霧の中に山の襞が幾重にも重なっている。
今日のコースはツツジ新道を登路にして檜洞丸へ登頂し、石棚山を経由して箒沢へ下山するものだ。西丹沢自然教室へ立ち寄って登山届けを出す。
こんな天候ではゴム長靴が良かろうということで今日はこれを履いて舗装路を歩き始めた。500mほど舗装路を歩いていくと路肩に檜洞丸への指導標がある。そこから落ち葉に埋もれた小道をたどっていく。沢沿いの道はすぐに傾斜のゆるい尾根道へと変化し、霧の中をゆっくり歩いていく。少し登ると道は尾根を乗越すようにして隣の沢へとゆるく下降していく。この沢は西丹沢自然教室の建物のすぐ近くで左岸から合流している東沢である。東沢は檜洞丸の西斜面から流れ出る比較的大きな沢。河原は幅も広く、霧の中でも白い花崗岩のせいで明るく感じる。
ケルンに導かれながら東沢沿いに50mほど遡っていくと、右からゴーラ沢が合流して対岸にコンクリート製の立派な階段が登場する。これが檜洞丸へと続くツツジ新道である。ここが最後の水場となるが、今日は家から4リットルの水を担いできているので補給は不要。ザックを下ろして一休みする。
ここからは急登と平坦な部分が交互に出てきながら高度を稼いでいく。徐々に霧もはれ薄日が差し込んで周囲の稜線が見え始めた。昨日からの冷たい雨で積雪になっているかもしれないと予想していたが雪はまったく見られず、すっかり葉を落とした冬枯れの明るいブナ林の中をゆっくりと登っていく。
息を切らせながら登って行くと標高1500m付近で石棚山稜からの道と合流。上空には青空が広がり始めた。整備された木道を緩やかに檜洞丸山頂へと登っていく。
途中で鹿を見る。普通は鹿を見て喜ぶところだろうが、鹿によるヒルの大発生、あるいは食害による植生の変化が深刻な問題となっていることを考えると複雑な気持ちだ。
右手に太陽光発電と風力発電用の小さな設備を見る。青ケ岳山荘の施設であろうか。
檜洞丸の山頂付近はブナの木々に囲まれているが木々は葉が落ちて見通しが効く。太陽の光が射し込み、風もないので気温は低いがぽかぽかと暖かい。
「気持ちのいいところだね」
と思わず敦子に話しかけた。
「うん、ぽかぽかして気持ちいい」
山頂のテーブルで昼食。ガソリンストーブに点火し湯を沸かす。山頂直下にある青ケ岳山荘は休業しているようだ。広い山頂部からこずえ越しに大きな蛭ケ岳が見える。堂々たる山容に強い印象を受けた。
塔ノ岳から西丹沢へと連なる山稜をはっきりと見た。そういえば、高校生の頃の空想登山では最も雪の深い3月に塔ノ岳から丹沢山、蛭ケ岳を経て檜洞丸へと至る丹沢主稜縦走にあこがれたことを思い出した。このコースはいつの日にかたどってみたい。
下山に使用した石棚山稜。この山稜の南東側の谷は通いなれた「小川谷」で、意外な位置関係にちょっと嬉しくなったりもする。
ブナの林の中をゆっくりとたどるプロムナードが一時間ほど続いた後は、小さなアップダウンを繰り返し一気に急下降するので、忍耐が必要だ。多少足がよれてきたのだろう途中で岩の上にのった濡れ落ち葉にすべり、向こう脛をしこたま打って泣きそうになった。少々長く感じる下降を終え、箒沢公園橋のキャンプ場へとたどり着いた。
西丹沢自然教室の駐車場までは舗装路を歩いて戻り、15:00に車を発進。心配していた首都高速の渋滞はさほどでもなく17:00丁度に四街道の自宅に帰りつくことができた。

来週末は連続して休日出勤で山には行けぬようだ。

※ゴム長靴は歩きやすい。ズボンの裾も汚れないし、足裏感覚も高い。もっと活用されても良いのではないかと思った。


西丹沢自然教室駐車場 8:20
登山口 8:27
東沢横断点「ゴーラ沢出合」(休憩) 9:10--9:15
展望台(休憩) 10:00--10:08
檜洞丸山頂(昼食) 11:22--12:07
テシロの頭 12:38
ヤブ沢の頭 13:09
板小屋沢の頭 13:34
箒沢公園橋 14:27
西丹沢自然教室駐車場 14:43


登山口


東沢の河原を50mほどたどるとコンクリートの階段がある

展望台から見る畦ガ丸方面


檜洞丸の山頂には小さな祠がある


楽しい昼食


箒沢も近い