2007年 夏

西丹沢 中川川

マスキ嵐沢

2007/07/14

二段15m滝

山岳雑誌「岳人」は夏に沢の特集を組む。今年の6月15日発売の7月号の第一特集に「日本の渓スタンダード10」とある。おなじみの沢がずらりと並んでいるが、その中に目を惹く言葉があった。「三大デート沢」・・・沢のカテゴリとして「デート沢」という言葉を使っているらしいが、初めて聞く言葉だ。
『デート沢とは関係を深めたい異性[初心者]と楽しむために神様が用意したような渓をいう』との岳人編集部の解説に笑みがこぼれる。なんだか、街の山岳会の若い男女のほほえましいエピソードが想像できるユーモアたっぷりの表現でほほが緩んだのだ。そこで挙げられている幾つかの沢の中に「マスキ嵐沢」があった。私の頭の中の沢リストの一つとしてインプットされた。
そして7月の三連休。妻と素直の三人で泊りがけの少し大きな沢へ行こうと計画していたがあいにく台風4号の直撃。7月の台風としては戦後最強ということで、沢歩きは中止せざるを得ないと思っていたところ出発の朝になってベッドの中で「マスキ嵐沢」を思い出した。
よし、行こう。
さて、実際に遡行してみての感想は、初心者向けの美しく良いルートという印象だ。下降路も非常に歩きやすい。山蛭の被害もなかった。丹沢の初心者向けのルートとして葛葉川やモミソ沢などが紹介されることがある。私もそう思っていたが、これからは違う。丹沢の初心者向けルートの第一のお勧めは「マスキ嵐沢」である。表丹沢の薄汚い沢よりも白い花崗岩が映える「マスキ嵐沢」の方が何倍も気がきいていると思う。

7月14日(土)雨

西丹沢の南面の渓谷は三つの河川で構成されている。すなわち西から世附川、中川川、玄倉川である。マスキ嵐沢は中川川の大滝沢の一支流に過ぎない。私の手元にある山と渓谷社の「丹沢の谷110ルート」でも、比較的あっさりと紹介されているだけだ。
車に乗り込む前に「丹沢の谷110ルート」を座席に放り込んで、四街道の自宅を雨の中出発する。
西丹沢へ行く時にいつも利用している最終コンビニが閉店しており、遡行図をコピーできなかった。やむなく「丹沢の谷110ルート」を一冊丸ごとビニール袋にくるんで、大滝橋バス停から歩き出した。ザーザー降りだが、寒くはない。大滝沢沿いの林道を「畦ケ丸」方面を示す道標に従って歩いていく。途中で林道から山道へと入り、丸木橋をいくつか渡っていくと「マスキ嵐沢」と記された立派な道標が横たわっていた。この道標がなければ、気がつかなかったと思う。
早速沢仕度を整えて歩き出した。歩き出しはガレており、美渓を想像できないが、すぐに花崗岩のナメ滝が始まった。土砂降りの雨にも関わらず谷は明るい。次から次へと傾斜のゆるい滝が連続する。どれも慎重に登れば問題のないものばかりだ。高さのある滝もいくつかあるから初心者がいるときにはビレイしたほうが良いかもしれない。
「丹沢の谷110ルート」の遡行図にあるチョックストーン滝の手前で休憩。雨がひどいのでタープを張って、少し早いが昼食にしよう。バラバラと雨粒がタープをたたくが、水ににごりは出ていない。小一時間ほどのんびりして出発。チョックストーン滝を越えるとしばらくガレが続く。二股に出た。水が濁り始めた。
左のほうが沢床が低く本流と思われたが右の支流にはケルンがあって奥に5mの涸滝が見える。「丹沢の谷110ルート」にある二俣であろう。右の支流へ入る。5mの涸滝を越えるとその先に10mの涸滝が見える。右には容易に巻くことの出来そうな斜面がある。滝に近寄るとスリングが下がっている。妻と素直を下に待たせ、ソロで登っていく。残置ハーケンは2本。いずれも効きが甘いので強く引くのは禁物。滝の上にはビレイ用のしっかりとしたアンカーが設置されている。ロープを下へ投げて素直と妻をビレイ。
この滝を越えて少し登ると前方に稜線らしき影が見え始める。沢を忠実に詰めていくと稜線の登山道にでた。ヤブこぎや不安定なガレ登りはない。
稜線上の登山道は非常に歩きやすい。小一時間で西丹沢自然教室に到着。ちょうど松田行きのバスが出発するところで、これに飛び乗った。ラッキー!バス代280円を支払って大滝橋バス停で下車。
秦野のファミレスで食事をして強い雨の中を家路についた。


雨の中の遡行だが渓相はあくまでも明るい



めずらしく巨岩がおおう滝



楽しく登ることの出来る滝が連続する



ホールドは豊富だが傾斜と高さがあるから慎重に行く



花崗岩の岩肌には適度なホールドがあって登りやすい



タープの下は極楽、ストーブで暖かい食事をとる



チョックストーン滝

最後の涸滝10m

7月14日
 四街道 5:20
 大滝橋バス停 7:35--8:12
 マスキ嵐沢遡行開始地点 8:46--9:05
 二段15m滝下 9:28
 二段15m滝上 9:35
 昼食 10:05--11:09
 チョックストーン滝 11:10
 二俣 11:26
 涸滝10m下 11:30
 涸滝10m上 11:45
 稜線 12:04
 西丹沢自然教室 13:01
 大滝橋バス停 13:10