2010年 秋

西丹沢

世附川 沖ビリ沢

2010/11/03

沖ビリ沢 源頭の涸滝
ナメの美しさが語られる沖ビリ沢だが、源頭に至ってもこの写真のように骨格のしっかりした沢であることがうれしい



文化の日、全国的な秋晴れを予報で聞いた。今年は少し紅葉が遅れているようだから、丹沢あたりでもまだ楽しめるだろうと想像しながら、出勤途上の車の中で妻を誘った。
短いところならいいよ、という。
以前から暖めていた沖ビリ沢。小規模な沢だが花崗岩のナメが美しいという。ここにしよう。
沖ビリ沢は西丹沢の世附川の源流部に位置しており、山梨県側の道志村から尾根を越えてアプローチとなる。1000mを越える山岳での今シーズン最後の沢歩きになるだろう。

11月3日(水)晴れ

沖ビリ沢へのアプローチの起点となるのは山伏峠である。道志川を遡って行くと山伏峠に達し、峠を越えると山中湖の湖畔まで程近い。従って、相模湖ICや八王子ICあたりから道志川沿いに国道413号でアプローチしてもよいし、中央高速河口湖線を山中湖ICまで走っても良い。私たちは山中湖を経由して山伏峠へと達した。富士山が白い帽子をかぶったように雪化粧し端正な姿を見せてくれた。
国道413号線の山伏峠にはトンネルがあって車の通行量は多い。今日は行楽日和と言うこともあって、ツーリングの車やオートバイ、自転車が頻繁に行き来する。
山伏トンネルの山中湖側の旧道に車を止める。
山伏峠への登山口はトンネルの道志村側にある。発見しづらい位置にあるが運良くすぐに見つけることができた。
ひと登りして山伏峠へ出て、左折する。
高圧電線の鉄塔の脚をくぐって紅葉の盛りを迎えた丹沢山塊の稜線を歩いていく。「大棚の頭」山腹を巻くようにして道は作られており、間もなく菰釣山と切通峠を結ぶ主稜線にでた。この稜線の道は関東海自然歩道として整備されているようで、道しるべなども随所に設置されている。
紅葉をくぐるようにして菰釣山方面へ少し登ると「水の木分岐」に到着。古いテーブルがある。
ここから南下する尾根を利用して世附川の源流部へと下降していくのである。踏み跡はしっかりしており、歩きやすい。1227mのピーク手前の鞍部から斜面をトラバースする踏み跡へと入る。踏み跡への入り口には赤いリボンなどがあるが、下り始めは踏み跡が不鮮明。しかしながら30mも進むと踏み跡は明瞭な水平道となる。
やがて杉の植林地帯を下り、左斜面をジグザグに下ったりしながら、テープの目印を頼りに細くなった尾根に沿って高度を下げていく。すでに妻はハァ、ハァと肩で息をしており不吉な予感がしないでもない。
最後は間伐材の散乱する杉林の急下降で沖ビリ沢の沢底に到着。妻は「疲れたよー」と言うなりウレタンマットを敷いて寝そべってしまった。これはかなりまずいパターンか?
ひとまずは湯を沸かして昼食とする。昨夜、弊店間際のコープ四街道店で40%割引で買ったミックス野菜。カップ麺だがミックス野菜を茹でてトッピングするとなかなかGood。13時近くになってようやく腰を上げる。
あまり見栄えのしない渓相だが、花崗岩の沢であることがかわる。花崗岩の沢となれば上流部にかなりの期待が持てる。
入渓してから間もなくF1。ここで右から中ビリ沢が流入。F1を越えてからしばらくゴーロが続く。ゴーロ地帯は歩きにくいので左右の河岸段丘を拾いながら登っていく。40分ほど登っていくと三俣となる。
この三俣から沖ビリ沢のナメが始まった。ここのナメは花崗岩だが表面がでこぼこしており、渓流シューズのフェルト底がナメに吸い付くというよりも、「食い込む」あるいは「かみ合う」という表現のほうがしっくり来るかもしれない。
途中でだれる部分はほとんどなく、ナメとナメ滝の連続を登っていく。滝がいくつかあるがトラロープがあったり、階段状だったりして簡単に越えていくことができる。
やがて顕著な二俣。この二俣は右も左もとても貧相。右へ行っても左へ行っても大差はないようだが私たちは右を選択。
ナメは二俣で終了するが、源流部も岩盤が露出しているので、不快感はなく登りやすい。
傾斜がどんどん強くなって、沢自体が傾斜のゆるい涸滝のようになってきた。もう頭上には稜線らしきものが見えている。丹沢のほとんどの沢はつめの部分でガレやザレになるのが普通だが、この沢は稜線直下まで沢筋を登らせてくれた。最後の部分で妻をビレイ。全体を通してビレイしたのはここだけだった。

沖ビリ沢はとても短く、技術的に難しい滝もない。登りやすいナメ滝とナメが連続する。初めて沢歩きをするには最適な一本だと思う。
沖ビリ沢を知るまでは初心者向けの最良の沢はマスキ嵐沢だと思っていたが訂正だ。安全度・美観からみて沖ビリ沢が勝る。難点は近年、公共交通機関のダイヤ削減がはなはだしく、実質的には車によるアプローチに限られるということか。

主要装備:8mm20mロープ1本、ツエルトなど


山伏隧道 10:02
山伏峠 10:14
水の木分岐 10:49
沖ビリ沢入渓点 12:07-46
三俣 13:18
8m滝上 13:45-14:02
二俣 14:11
稜線 15:10-27
水の木分岐 15:35
山伏峠 16:03
山伏隧道 16:11




周辺の記録
世附川流域の過去の記録はありません