2007年 夏

丹沢

葛葉川本谷

2007/06/16

途中で表丹沢林道が横切る 前方上部に大平橋の橋脚が見えている

表丹沢と称される山々の稜線からは相模湾がすぐそこに見下ろせる。
「ああそうか丹沢は海に面している山なんだ」とあらためて思う。
その相模湾へ注ぐ川は丹沢の山を削って多くの沢を形成している。これらの沢は古くから東都の岳人によって登られていたもので、今でも初夏を迎えるころから晩秋近くまで、多くの登山客を迎える。それらの沢の中から人気のある沢を挙げてみると「水無川本谷、勘七ノ沢、葛葉川本谷、新茅ノ沢、モミソ沢、源次郎沢、セドの沢」などがある。これらいずれの沢も半日コースの手ごろなもので、ガイドブックでは初級者向けとして紹介されることが多いようだ。しかし滝の直登による事故も少なくない。
さて、私が在住する千葉県四街道市からは、渋滞がなければ一時間半で沢の取り付きまで到着することができるのでこれらの沢は非常に貴重な存在だ。1971年以降、繰り返し幾度となく訪れている。ただし、上ノ廊下や赤木沢あるいは那須の井戸沢などを知ってしまった今となっては、表丹沢周辺の沢をがっかりするほど薄汚く感じてしまうのは仕方がない。

6月16日(土)快晴

週の始めに、週末に素直と沢へ行く話しをしていた。日曜日は憬稜登高会創立50周年記念式典で山野井泰史氏の講演へ二人とも行く予定だし、来週の土日は私が休日出勤。だから行くとすれば今週の土曜日しかないということになった。葛葉川が短くてよかろうと固まってきたところで、妻を誘うといくという。木曜日の天気予報では梅雨入りして土日は雨という予報だったが、金曜日の予報では好天が予測されていた。木曜日の天気予報に従って山行を中止した人も少なくなかったのではあるまいか。
朝、5時40分に四街道を出発。快晴。
7時に東名高速の秦野中井ICで高速道路を下りて「葛葉の泉」に7時30分ころ到着。途中のコンビニで買った弁当を食べ、沢仕度をする。ここのところ仕事がきつく倒れるように帰宅する日が続き事前準備がほとんど出来ていない。適当に装備を車に放り込んだので、忘れ物があるかもしれない。動きが緩慢で渓流シューズを履くにも時間がかかる。
葛葉の泉に水を汲みにくる人が後を絶たない。その中の一人が「山ヒルに気をつけたほうがいいよ」という。ついに表丹沢にまで山ヒルの生息地が広がってしまったのかとため息が出る。原因は鹿の大繁殖によるものだ。繁殖した鹿に乗って山ヒルが勢力範囲を拡大していく。一方山の植物を食べつくし、餓死する鹿も多い。そのような状態に変化しつつある丹沢。そんな変化を感じて憂うのは遡行者だけなのだろうか。
沢仕度がようやく終わり8時半近くになって葛葉川本谷へ入る。
ヤブがうるさくまとわりつき、快晴にもかかわらず谷の中は薄暗い。おまけに山ヒルに気をとられ快適とは言いがたいような遡行である。しばらくしてヤブも切れはじめたが、鬱蒼とした樹木の中に谷は続き薄暗いことこの上ない。
山ヒル、鹿の死体、薄暗いということで丹沢の沢の遡行シーズンの選択はとても難しい時代になったのかもしれない。西丹沢方面での汚染状態が気になるところだが、最後の砦である小川谷が山ヒルの谷になる日がいずれ来るのだろうか。
手ごろな滝をいくつか越えて板立ての滝に到着。これは水流に沿って登ることはあきらめ右側の壁を登る。妻と素直をビレイ。
これを越えるとまもなく林道を横切る橋。ザックをおろして大休止。天気が良いので本来であれば明るいはずだが、谷の中は鬱蒼とした木々に囲まれて暗い。
小さな滝を慎重に越え、富士形の滝を越えたところで昼食。湯を沸かしてカップ麺を食し、お茶を飲む。快晴の青空が広がって気持ちが良い。水流も少なくなってきたので渓流タビを脱いでハイキングシューズに履き替えた。ここで初めて他の遡行者にあう。単独のおじさんだった。
食後は頑張って源流地帯まで登って左の踏み跡へ出て三の塔山頂へ。
三の塔の山頂は陽の光にあふれている。近くに残雪をたっぷりとつけた富士が大きく見える。かわいらしい三角屋根の山小屋が建つ烏尾山が見えるが、あそこも気持ちがよさそうだ。ザックの中身を全部出して腰をおろし休憩。今朝出発した菩提方面を見下ろして、よく登ってきたなぁと思う。案じていた山ヒルの被害はなく安堵。
下山はニの塔尾根を下って、葛葉の泉まで戻った。


ヌルヌルの滝



右の細い水流沿いに登る



この滝は右端を登る



板立ての滝。これは写真右手の壁を登る。
ロープを出して妻と素直をビレイ



滝の数は多い



チョックストーンのひっかかるこの滝は左を巻き気味に登る



富士形の滝



饅頭のようなスラブ状の最後の滝
これを越えるとまもなく最源流地帯



ヤブこぎなしで踏み跡に到達



三の塔山頂に建つ避難小屋



まだたっぷりと雪が残っている



烏尾山を見下ろせる位置にある



空に浮かんで気持ちよさそう・・・いいなぁ

パラグライダーが日本へ入ってきた頃は
パラパントと呼んでいた

6月16日
 葛葉の泉 8:20
 大平橋 9:35--9:50
 富士形の滝上 10:32--11:47
 三の塔 12:37--13:02
 葛葉の泉 14:15
※白山書房2000年5月10日発行の「東京周辺の沢」31ページの写真に板立の滝とあるが、この滝は板立の滝ではない。