2011/05/03-05
明神の稜線を前穂高岳へ向かう
今年は雪が多く、直前の情報では横尾から涸沢への道は通行禁止だという。ならば岳沢で我が家の春山合宿を行うことにして計画を練り直した。
岳沢は上高地から近いので入山が楽。多少荷物が多くても何とかなるので準備もアバウトになりがちだ。久しぶりに素直と朋子の二人を連れて四人での合宿となった。
前夜、21時に四街道を出発し、沢渡へは2時に到着。いつもの通り沢渡上駐車場へ車を止めテントを張って就寝。
すっかり明るくなってから起床。沢渡周辺はようやく芽吹きの時期の入り口にあるという感じだ。まだ緑は薄い。天候は曇り。
今日は岳沢までかと思うと気が楽。ゆっくりと準備を整えバスに乗る。
事前情報の通り上高地は例年になく雪が多い。2006年も多かったがそれに近い。あの年は岳沢ヒュッテが雪崩で倒壊し、経営者の上條さんが上高地で交通事故にあい亡くなった。なんともやりきれない春だった。
河童橋を渡り、林道をしばらく歩いて岳沢への登山道へ入る。すぐに雪道となった。ザックが重いので歩みものろい。こまめに休憩をとりながら登っていく。やがて樹林帯から岳沢の雪原へと入る。大きなデブリで埋め尽くされている。
ここから岳沢小屋までが長かった。13時過ぎに到着。岳沢ヒュッテは経営が槍ヶ岳山荘に替わって名前も岳沢小屋になった。テントを張り終え夕食の準備をしていると雪が舞い始めた。涸沢に比べるとテントの数は10分の1以下。静かなテントサイトである。
今日は父の命日。
午前2時に空を見ると満点の星空。
今日の予定は奥明神沢からの前穂高岳往復。
3時に皆を起こし朝食の準備。すっかり明るくなってから出発。出発の頃には空は曇り始め風も若干出てきたようだ。見上げる稜線は標高2500mから上はガスに覆われており微妙な雲行きである。場合によっては途中で引き返すことも十分に想定されそうだ。
妻のペースに合わせながらゆっくりと登っていく。今年は前穂山頂へダイレクトに続く沢にも雪がしっかりとついている。多くの登山者はダイレクトに登っていく。私たちは右へ折れて明神のコルへ。朝なので雪は固く傾斜は強い。アイゼン前爪を多用しながら登っていく。滑落したらすごいスピードで落下することになりそうだ。慎重に登っていく。コルでは明神岳へ登るパーティーがビレイをしている。私たちはコルで休憩。天候は少しづつ回復に向かっているようだが、風が強いのでゆっくりとは休めない。前穂への稜線は岩が露出しておりアイゼンの爪をガリガリ言わせながら登っていく。途中で段差があって少し登りづらいところがあったがビレイの必要性は感じなかった。細い岩稜をたどりいったん小さなコルに下った。そこから更にもう一つピークを越えて二つ目のコルへ降り立った。空はすっかり晴れあがって正面に前穂が見えた。真っ白な雪の斜面が青空につづいて、その先端が山頂だ。
この斜面で滑落することは許されない。お互い声を掛け合いながら慎重に登っていく。
雪に覆われた前穂の山頂は夏に比べると少し狭くなったように感じられる。涸沢が見える地点まで行ってみると北尾根を登るクライマーが目の前に見え、真下に涸沢のテント村。
下降ではアイゼンの後ろ爪をスパッツに引っ掛けやすいので、コンテで3人をビレイしながら下る。岩稜の下りではスタカットも併用した。
朝方恐ろしく感じた奥明神沢の急斜面は午後になって雪が緩み、ステップも大きくとることができて、案じることなく下降することができた。一方で雪が緩んだ為にブロック崩壊や落石の危険性が増大。実際のところ大きな落石が登山者に当たりそうになった。途中から斜面の滑降を許可。朋子と素直は歓声をあげながら下降して行った。私と妻は一歩一歩下っていく。
子供たちに遅れること30分以上でテントに到着。子どもたちはテントの中でお菓子を食べていた。
岳沢小屋には給水設備があるし、トイレも新しく清潔。しかも静か。ゴールデンウィークのBCとしては快適なキャンプ生活ができる場所だ。
ただし涸沢とは異なる顕著な点が二つある。
ひとつは岳沢小屋周辺のキャンプサイトは雪崩の危険性が高い。私はそう思った。だから岳沢ヒュッテが雪崩で倒壊したのである。岳沢小屋の200mほど下部の左岸台地のほうが良いかもしれない。実際のところ左岸台地をBCとしているパーティーがいた。
もうひとつは涸沢から奥穂・北穂のような一般コースは存在せず、いずれのコースもバリエーションルートの範疇であることだ。
天候は良い。今日は下山するだけ。しかも上高地まで至近距離だから本当に楽だ。9時半近くになって下山開始。12時前に河童橋に到着。
沢渡では桜が咲き始めていた。竜島温泉へ行く。沢渡の温泉よりもこちらのほうがよろしいようです。女性軍は長湯なので、待っている間、素直と二人で内緒でシーザースサラダを食べた。それから四人で松本インター近くの100円回転すしを食べて家路についた。
走行距離:622km、ガソリン消費量:60リットル
2011年5月3日火曜日 | |||
河童橋 | 9:03 | ||
岳沢小屋 | 13:32 |
2011年5月4日水曜日 | |||
岳沢小屋 | 5:40 | ||
奥明神沢のコル | 8:42-9:19 | ||
前穂高岳 | 11:16-56 | ||
奥明神沢のコル | 14:31 | ||
岳沢小屋 | 15:37 |
2011年5月5日木曜日 | |||
岳沢小屋 | 9:22 | ||
河童橋 | 11:54 |
周辺の記録 | ||||
2010 | 夏 | 北アルプス | 我が家の夏山合宿「室堂から薬師岳縦走」 8/10-8/15 | 家族と |
2010 | 夏 | 北アルプス | 剱岳 (源次郎尾根より) 7/17--7/19 | 家族と |
2010 | 初夏 | 北アルプス 上高地 | 小梨平キャンプ事情 6/5-6 | 同僚と |
2010 | 春 | 北アルプス 穂高 | 我が家の春山合宿「北穂高岳東稜」 5/1--4 | 家族と |
2009 | 夏 | 北アルプス | 黒部川 御山谷 8/28-29 | 友人と |
2009 | 夏 | 北アルプス | 上高地徳沢 7/18-20 | 一人 |
2008 | 夏 | 北アルプス 金木戸川 | 我が家の夏山合宿「双六谷から九郎衛門谷」 8/10--8/16 | 家族と |
2008 | 夏 | 北アルプス | 裏銀座コース「烏帽子岳から槍ヶ岳」 7/28--8/3 | 素直 |
2008 | 春 | 穂高 涸沢定着 | 我が家の春山合宿「涸沢から奥穂高岳」 5/3--5 | 家族と |
2008 | 冬 | 上高地 | スノーシューハイキング3/8--10 | 家族と |
2007 | 秋 | 黒部川 下ノ廊下 | 我が家の秋山合宿「下ノ廊下」10/6-10/7 | 家族と |
2007 | 夏 | 黒部川 上ノ廊下から赤木沢 | 我が家の夏山合宿「上ノ廊下から赤木沢」8/11--8/17 | 家族と |
2007 | 夏 | 燕岳から常念岳 | 燕岳から常念岳 7/30--8/1 | 素直 |
2007 | 春 | 穂高 涸沢定着 | 我が家の春山合宿「涸沢から北穂高岳」 5/3--5/5 | 家族と |
2006 | 夏 | 黒部川 上ノ廊下から赤木沢 | 我が家の夏山合宿「上ノ廊下から赤木沢」 8/11--8/17 | 家族と |
2006 | 春 | 穂高 涸沢定着 | 我が家の春山合宿「涸沢から奥穂高岳」 5/3--5/6 | 家族と |
2004 | 秋 | 黒部 奥鐘山西壁 | 奥鐘洞窟の七日間 9/18--9/24 | 若人と |
2004 | 夏 | 黒部川 上ノ廊下 | 我が家の夏山合宿「黒部川上ノ廊下」 8/8--8/14 | 家族と |
2004 | 夏 | 黒部 丸山東壁 | 丸山東壁 敗退 7/17-18 | 仲間と |
2003 | 秋 | 黒部 奥鐘山西壁 | 正面壁 岡山クライマースクラブルート 9/19--24 | 若人と |
2003 | 夏 | 穂高岳 屏風岩 雲稜ルート | 我が家の夏山合宿「ぼくの登山日記」雲稜ルート 8/9--8/14 | 家族と |
2002 | 秋 | 穂高岳 屏風岩 東壁ルンゼ | 東壁ルンゼ 9/21--23 | 仲間と |
2002 | 夏 | 槍ケ岳 北鎌尾根 | 我が家の夏山合宿「北鎌尾根」 & ぼくの登山日記 8/11--17 | 家族と |
2002 | 夏 | 立山 | 室堂・浄土山・竜王岳・五色ヶ原・平の小屋・黒部ダム 8/6--9 | 敦子 |
2002 | 春 | 槍ケ岳 北鎌尾根 | 北鎌尾根 4/27--5/1 | 一人 |
2001 | 夏 | 前穂高岳北尾根 | 我が家の夏山合宿「ぼくの登山日記」 8/11--16 | 家族と |
2000 | 夏 | 表銀座から槍・穂高縦走 | 我が家の夏山合宿「表銀座から槍・穂高縦走」 8/1--8/8 | 家族と |
1999 | 夏 | 奥穂から前穂縦走 | 我が家の夏山合宿「奥穂高岳〜前穂高岳〜岳沢」 8/18--8/23 | 家族と |
1998 | 夏 | 表銀座縦走 | 我が家の夏山合宿「表銀座縦走」 8/1--8/8 | 家族と |
1997 | 夏 | 奥穂高岳 | 我が家の夏山合宿「涸沢〜奥穂高岳〜涸沢」 7/20--7/22 | 家族と |