2011年 冬

房総丘陵

嵯峨山・鋸山 境界尾根

2011/03/05

房総には珍しい露岩帯があってちょっぴりスリリング


寒の戻りがあって週末から寒い。移動性高気圧が張り出してもう少し気温が上昇するかと思ったがそうでもない。
春近い寒い日にはやっぱり房総丘陵で陽だまりハイキングが似合う。
選んだコースは水仙で有名な嵯峨山から鋸山への稜線。富津市と鋸南町の境界線に沿った尾根。
植草さんたちが著した「千葉県の山」にもこの稜線のことは紹介されていない。というのも稜線の鋸南町側にある砂採取場が年々奥へと侵食し、ついに稜線までも削り取ってしまったからだろう。私たち山登りを好む者にとって房総丘陵で悲しいのは林道とゴルフ場の開発に加えて、砂採取場の存在か。
今回のコースは入山地点が小保田で下山地点が鋸山表参道口と異なっているので、車の配置に工夫が必要だ。プランではJR保田駅に隣接する広場に車を止め、町営バスで小保田下車。ここから登って、下山は鋸山を経由してJR保田駅へ戻るということにした。

3月5日(土)晴れ

朝起きて、パソコンの電源を入れたら、土橋さんからメールが来ている。開いてみると阿弥陀岳南稜の写真のオンラインアルバム。土橋さんは毎年2月に驚異的なスピードで阿弥陀岳南稜をワンデイする。今年の冬は中崎尾根から槍ヶ岳を往復している。ご年配の土橋さんを見ていると、55歳の私はハナタレ小僧だと思うし、トレーニングをすれば70歳や80歳を超えてもまだまだやれると勇気付けられる。
これから「妻と房総へ行く」と返信して、6時40分に自宅を出る。
車の外気温計の表示はマイナス1度。冷え込んだ朝を迎えた。ちなみに四街道の今冬の最低気温はマイナス4度。
保田の駅に到着したのは7時51分。7時55分発の町営バスで小保田へ行こうと思っていたが、この便は土日祝日は運休との表示で、予定が狂った。仕方がないので小保田まで車で入り、少し山間へ入ったところにある空き地に車を止めた。
すでに水仙は終わっており、ハイカーの姿はまったくない。湧き水で濡れた路面は凍り付いてすべる。
水仙畑の左端をゆるやかに登ってマテバ椎の薄暗い樹林帯を登っていく。やがて標高200m付近で目的の稜線に出る。左へと向かう稜線には踏み跡はないがピンクのビニールテープがある。私たちはいったん水仙ピークに登ってから縦走をスタートさせるつもりなので、道なりに右へと行く。
釜ノ台集落へと向かう峠の手前にザックをデポし、水仙ピークを往復。
峠へ戻ってザックを背負い、先ほどの標高200mの分岐点へと下る。分岐点といっても落ち葉が積もって踏み跡は薄く、判然としない。しかしながら尾根の背は下草がないので歩きやすい。しばらく歩くと踏み跡がはっきりし始めた。
小さなピークを上り下りしながら歩いていくと高圧電線の鉄塔に到着。鉄塔の下が気持ちの良い草地になっていたので一休み。
房総は地形が複雑で読図が難しい。しかも作業道や獣道が交錯しているので地形図を見ないでトレースを追っていくとルートをはずれて、あらぬ方向へ引き込まれてしまう。一度、ルートをそれてしまったが、すぐに気がつき修正。
やがて前方に砂採取によって山肌を大きく削り取られてしまった無残な谷が見え始めた。道は砂採取場の高台で行き止まり。
行き止まりの地点は気持ちの良い広場になっており展望も良い。時計を見ると11時過ぎ。ここで鍋焼きうどんとする。先週と異なり風がまったくなく春の日差しがあふれるほどだ。
ウレタンマットを敷いて、どっかりと腰を下ろし、バーナーを組み立て、鍋をセットする。うどん、麺つゆ、水、野菜、てんぷら、卵、麩を入れ、点火。
食後、ルートの検討を行う。
眼下には砂採取場の谷が広がっている。ここからダイレクトに下るのかもしれないが、きっと迂回路があるだろうと見当をつけ50mほど戻る。案の定、右手の斜面に薄い踏み跡を発見。古びたビニールテープもある。これだろうとたどっていくと砂採取場の一角に出た。
砂採取場は水平に幾つものバンドが走っており、その最上段に近いところへ出たのである。大型ダンプが通れるほどのバンドを伝わって先へ進む。
この砂採取場の通過はトリッキーで、踏み跡らしきものはほとんど見当たらない。あるのは鹿の足跡ばかり。
見事な露岩の下を通過。もし、これが硬い花崗岩だったら最高だけれど、実際は砂を固めたようにやわらかい。
澄んだ水を湛える溜池のところで、右に白狐川への道を分ける。さらに進んでバンドの行き止まりまで歩いてみたがそれらしき突破口はない。
あたりを注意しながら溜池近辺まで戻ると、妻が「これケルンじゃない?」という。確かにケルンだ。ここから右の斜面を登るらしい。
これが正解だった。
斜面を登りススキの茂みをかき分けていくと岩場の右端から樹林帯へと入る小道がある。もう12時半だと言うのに岩場には氷が融けずにベルグラとなっている。ここからは細いながらも踏み跡はしっかりしており迷うことなく進む。左に砂採取場の崖を望みながら細い岩稜を上り下りする。房総丘陵にはめずらしい景観だ。念のために妻にはハーネスをつけさせ、ロープも用意していたが、その必要性は感じなかった。小さなアップダウンをうんざりするほど繰り返してようやく「関東ふれあいの道」が通る林道に出た。
この林道を左へ下ると保田、右へ下ると竹岡へでる。
保田への道は過去二回ほど歩いたことがある。この季節には花が咲いて感じのよい道だ。少し休憩する。
私たちは保田へは下らず鋸山を目指して再び登りはじめた。
歩きなれた道をゆっくりと登っていく。ここまでくるとハイキングをしている人たちとすれ違うようになる。鋸山山頂のベンチに腰を下ろし湯を沸かしてわかめスープとコーヒーを飲む。
鋸山から稜線を更にたどる。千葉テレビの電波塔を過ぎ、浜金谷へと下る石段の分岐点を通過して日本寺境内へ入る。
境内は観光地なのでたくさんの人が歩いている。大仏を拝んで東口から車道へ出てアスファルトを下っていく。途中からわき道へ入ってJR保田駅へと歩いていく。
保田駅へ到着すると、小保田方面へ向かう町営バスの出発時刻まで10分。
妻を駅に残して、私がバスに乗って小保田においてある車を回収することにする。
小さな青いバスは16時10分に出発した。土日はこれが最終便だという。幸運であった。
問題なく車を回収し、保田駅で待つ妻を迎える。
今日は良く歩いた。車の中でそのような会話をしながら家路についた。

走行距離:168km、ガソリン消費量:17リットル


カシミール3Dによるルート図は「アルバム」に掲載しています

2011年3月5日土曜日
小保田 8:32
標高200m分岐点 9:01
水仙ピーク 9:18
標高200m分岐点 9:33
高圧電線鉄塔 9:49-57
砂採取場入り口(昼食) 11:05-55
砂採取場出口 12:27
林道 13:28-34
鋸山 14:17-38
日本寺大仏 15:11-15
JR保田駅 15:57




周辺の記録
2011 房総 八良塚から高宕山・石射太郎 2/27 家族と
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