2010年 秋

奥秩父

笛吹川 東沢 釜ノ沢東俣

2010/10/24

両門の滝 撮影:田部井裕介

秋が深まり、紅葉の便りが相次いでいる。
笛吹川の紅葉はどうなっているだろう。今年は紅葉が十日ほど遅れているというから、おそらく東のナメあたりが見ごろではなかろうか。
田部井君と行って見ようということになった。当初の計画ではのんびりと一泊二日で楽しむ予定だったが、あいにく土曜日に仕事が入っていまい、やむなく日曜日に日帰りすることになってしまった。皮肉なことに土曜日は全国的に秋晴れ。品川のオフィスの窓からは見る青空。明日も晴れてくれればよいのだが、天気予報は日曜日の午後からは雨模様を告げている。

10月24日(日)曇りのち小雨

いつもの通り八千代台で4時に待ち合わせ。
天候は芳しくない。できれば雨の中を登りたくはない。首都高を走りながら天気予報を聞く。それによると雨が降り出すのは午後だという。場合によっては八ヶ岳の尾根歩きも想定していたが、予定通り釜ノ沢東俣を歩くことに決める。
塩山のコンビニで朝食の弁当とオニギリを買う。
6時20分に西沢渓谷駐車場に到着し、ハイドレーションシステムをセットし6時40分に歩き出した。
9月に田部井君と釜ノ沢西俣を遡行した時はとても蒸し暑く、歩き始めてすぐに汗びっしょりになってしまった。それが先月のことだとは信じられないほどのひんやりと冷たい空気。長袖のラガーシャツを着ていても肌寒いくらいだ。
この近辺の紅葉の見ごろは来週あたりのようなので、東沢の中流部は見ごろを迎えているに違いない。
二俣の吊り橋から東沢の流れを見ると、先々週の増水とは打って変わり穏やかな流れだ。山ノ神の先までは運動靴の方が楽なので、鶏冠尾根への踏み跡を歩いて素足の徒渉で登山道へはい上がる。渓流シューズのフェルト底も磨耗が防げて好都合だ。今年は夏山合宿で大きな沢に行かなかったせいもあって、シーズン終盤にもかかわらすフェルト底が健在なのがうれしい。
鶏冠谷徒渉点から私たちの前を歩いていたご婦人を含む中高年のパーティーが清兵衛沢で休んでいた。かなりの年配者とお見受けしたが、私も歳をとったらこうありたいものだ。
山ノ神の先で渓流シューズに履き替える。
乙女の滝から東のナメ、西のナメ周辺まで針葉樹の緑と赤や黄のコントラストが美しい。曇り空なのが残念だ。
釜ノ沢の魚止めの滝を越え、千畳のナメに入る。
途中で親子が下降していくるのに出会った。息子さんは中学生くらいだろうか。二人とも足回りは運動靴だったから敗退の理由は装備かもしれない。我が家も最初から十分な装備をそろえることはできなかった。代用品で失敗したこともある。昔の我が家を思い出し「幸あれ」と心の中で小さく祈る。
野猿の滝は右を大きく巻く。
両門の滝に到着。まだ11時前だが、気持ちの良い場所なので、ここで昼食。美しい紅葉をめでながら湯を沸かしカップ麺やお茶を飲む。
薬研の滝はいつもの通り右のリッジを少し登ってトラバースして落ち口へ。つづく5m滝は流れを左へ渡って瀑水際の左壁を登る。
やがて広河原。
「泉の湧く場所でビバークできたらどんなに幸せだろうか」などと思いながらゆっくりと歩いていく。
ここのところ通勤途上で聴いている「Into the Wild」のエディ・ヴェダーの曲が頭の中を流れて止まない。それは「ロング・ナイツ」「ソサイエティ」「ギャランティード」だったりする。そんな曲を聴きながら広河原の長い樹林帯を歩いていく。
この広河原は格好のビバークサイトがいたるところにある。そういったビバークサイトには焚き火の跡があったりするが、中にはゴミを焼却しようとして焼却しきれずに放置しているものがあって、本当に悲しくなる。せめて燃やしきって欲しいと切に思う。
広河原が終わってゴーロを登っていくと水師沢手前の40mナメ滝に到着。以前は右を登っていたが、左を登ったほうが安全だということに前回気づいた。したがって左を登る。
水師沢出合で休む。このあたりはカラマツの黄葉が盛りを迎えていた。針のような葉が曇り空の下で金色に黄葉していた。
ここから少し登ると標高2000m地点で左から大きな沢が流入してくる。正面の針葉樹に左への矢印が記された丸い看板が打ち付けられている。左から流入してくるこの沢は大きなもので、水量は本流よりも多い。いや訂正だ。地形図を見るとこの沢は甲武信岳の山頂に突き上げるもので、これこそが本流だということがわかる。しかしながらこの沢の存在を記述した遡行図を市販のガイドブックで見たことがない。とても不思議な気がする。
従来遡行対象となっているのは本流ではなく、甲武信岳と木賊山の鞍部へと突き上げる支流にすぎない。
左の支流へ入る。階段状のナメ滝をぐいぐい登っていくと正面に最後の滝である木賊沢分岐点のナメ滝が見え始める。倒木帯を右から抜けてナメ滝に取り付く。木賊沢を右にわけ、踏み跡に沿って左の沢へと入っていく。
ここまでくると岩質が変化し、凝灰岩となる。沢はナメで歩きやすい。明るくひらけた沢だが今にも雨が落ちてきそうだ。対岸を見るとガスがすぐ近くまで押し寄せてきており、雨が降り始めるのは時間の問題のようだ。気温が低いので雪になっても不思議ではない。
ようやく甲武信小屋のポンプ施設に到着。ここで運動靴に履き替える。
10分ほど登ると甲武信小屋。テラスには大学のワンゲルだろうか、若い男女数人が楽しそうにはしゃいでいる。屋根の下でくつろいでいると雨が降り始めた。
カメラに厳重な防水対策をしてザックにしまい下山を開始。
秋の陽は短い。雨空の森の中は薄暗い。西沢山荘手前の林道に到着する少し手前でヘッドランプに点灯。17時20分に林道へ到着。
秋の雨に打たれて体は冷え切っていた。笛吹きの湯で体を温め、塩山の中華料理店しん源で夕食を摂り充実した秋の一日を終えることができた。

主要装備:8mm20mロープ1本、ビバーク用タープなど


駐車場 6:40
西沢山荘 7:07
つり橋 7:11
徒渉点 7:23-33
ホラの貝入り口 8:00
山ノ神 8:25
遡行準備 8:29-41
乙女ノ滝 9;02
東のナメ 9:13-22
釜ノ沢出合 10:08
野猿の滝 10:35
両門の滝下 10:53-11:17
両門の滝上 11:22
薬研の滝 11:24
広河原終了地点 12:21
水師沢出合 12:47-58
木賊沢出合 13:45
ポンプ小屋 14:08-18
甲武信小屋 14:28-40
戸渡尾根下降点 15:05
西沢山荘 17:20
駐車場 17:44






周辺の記録
2010年10月11日釜ノ沢東俣
2010年9月14日ナメラ沢
2010年9月4日釜ノ沢西俣
2010年7月31日釜ノ沢東俣
2007年8月25日釜ノ沢東俣
2004年8月1日ホラの貝ゴルジュ