2007年 夏

奥秩父 笛吹川東沢

釜ノ沢東俣

2007/08/25--26

この滝で千畳のナメは終わる

上ノ廊下に行けなかった素直。あまりに気の毒ということでどこかへいこうということになった。二週間寝込んでいて、病み上がりだからあまりきついところはやめた方が良いだろう。
そこで選んだのは笛吹川東沢。
冬にはアイスクライミング、秋には紅葉狩りと幾度となく訪れている笛吹川だが、源流までさかのぼったのは1970年代初めの頃の一回だけ。広瀬ダムがまだ完成していなかった頃だ。
あの時のメンバーは砂田と斉藤の三人。足回りは登山靴だった。
東沢の山ノ神を経て西沢渓谷へ周回する遊歩道が整備されており、乙女の滝の近くには東沢小屋という無人小屋があった。渡渉の度に登山靴を脱いではだしになるということを繰り返しながら遡行していった。両門の滝の手前で斉藤が数メートルほど落ちるというハプニングがあった。これをきっかけにして斉藤は山に来なくなった。翌日は途中から雨となり甲武信小屋へ立ち寄ると小屋番に「宿泊費はいらないから泊まっていってくれ」とせがまれた。断る私たちをなんとか引きとめようとする小屋番。コタツに私たちを招きいれ菓子をだして酒をすすめてくれた。それを丁寧に断って雨の中を出発するのはつらかった。

8月25日(土)晴

渋滞さえなければ笛吹川は近い。四街道を4時に出て6時前には道の駅「みとみ」へ車をとめることができた。
つり橋を渡って河原におりると前方に数十人の登山客の群れが見える。一体何事かと近くまでよってみると笛吹川を遡行しようと最初の渡渉地点の手前で沢靴に履き替えている最中の人々だった。ものすごい人気だ。私たちも仕度を整え立ち上がる。
35年前にあった桟道はすでにないが左岸に明瞭な踏み跡がある。多少のアップダウンを繰り返しながらホラの貝を大きく高巻いて山ノ神の河原に出る。
昔は感動した東のナメだけれど、みすぼらしく感じる。おそらく茂った広葉樹がナメを覆っていたのでそう感じたのだろう。
西のナメを左に見てやや行くと釜の沢が右へと分岐する。ちょっぴり貧相な釜の沢を入った直後に魚止めの滝が現れる。
ここから数キロが笛吹川東沢の一番美しい部分である。夏も良いが秋の紅葉シーズンはさぞ美しいことだろう。ガバホールドを利用して左側のスラブから魚止めの滝を越えると千畳のナメが始まる。
自然の造形に誰もが驚くだろう。ナメは水平に近い傾斜で学校の廊下のように上部へと続き、その廊下の幅いっぱいに数センチの厚みで水が流れている。そこをひたひたと歩いていく。
千畳のナメのフィナーレはしっかりとした釜をもった傾斜のゆるいナメ滝。その後はやや平凡な流れとなるがまもなく両門の滝。傾斜はゆるいが落ち口の一歩に不安を感じロープを使用。
薬研の滝を越えると渓の幅が急激に広がって、鬱蒼とした広大な針葉樹林帯となる。その広い樹林帯の左端を笛吹川は流れている。水流沿いはゴーロとなっており歩きにくい。一方、右側に広がる針葉樹林帯の中は奥秩父特有の苔と倒木が積み重なっている。そしてその中に獣道に近いような小道がある。二人で小道を歩く。針葉樹林の中の小道は歩きやすいし気持ちが良い。
しばらく歩いていくと渓は幅を狭め始め傾斜も強くなり始める。このまま進むと甲武信小屋についてしまう。沢の中でビバークすることを楽しみの一つとしていたのでとても早い時間だがビバークサイトを物色しながら歩いていく。
すぐに良い物件にあたり、即決してタープを張る。
真昼間でまだ陽も高いが木漏れ日を受けながら昼寝をするのは最高の気分だ。素直と二人でしばらく寝入ってしまった。炊飯はいつもの通り焚き火。河原まで降りて火床を作りビリーカンを吊るす。日本酒を飲みながらとろとろと火をみながら過ごす。
夜中に目が覚めた。タープを通して照明をあてられているようだ。最初は何かと思ったら月明かりだった。

8月26日(日)晴

4時に目が覚め、素直を起こしたのは5時半。朝食も焚き火で作り、8時過ぎに出発。
気持ちのよいナメ滝を越えてぐんぐん標高を上げていく。
水師沢の出合にも良いビバークサイトがある。昨日はここまで来ればよかった。
甲武信小屋にはヤナギランが咲いていた。小屋前のベンチに座って素直と二人でポカリスエットを買って飲んだ。
下山は戸渡尾根から近丸新道。ヌク沢を横断してからしばらく古い軌道跡を歩いた。
紅葉シーズンに再訪してみたいと思った。


魚止めの滝



魚止めの滝は左のスラブを登る



千畳のナメ



千畳のナメ



ビバークサイト



夕餉のしたく



源流部の滝

甲武信小屋とヤナギラン

8月25日
  道の駅「みとみ」6:21
  釜の沢出合9:50
  両門の滝11:15
  BP13:02
8月26日
  BP8:09
  水師沢出合8:43
  甲武信小屋10:24--10:53
  道の駅「みとみ」13:21