2010年 夏

男鹿山塊 那須

苦土川 井戸沢

2010/07/25

井戸沢中流部の赤い15m滝

先月井戸沢を登った際に、荒廃した会津中街道の刈り払いが行われたことを知った。
すぐにでも再訪して確認したかったが、一か月以上が経過し、今回ようやく訪れることができた。
実際に会津中街道を歩いてみての感想だが、非常に歩きやすい道だ。
大峠から三斗小屋宿へ下降する場合、一般道を経由すると2時間半を要するが、この道を使うと1時間10分である。
晩秋の頃、落ち葉を踏みしめながら、いにしえの戊辰戦争をしのび会津中街道を大峠へたどるという山旅をいつの日にか実現させたいものだ。

7月25日(日)晴れのち雷雨

いつもの通り母を幸乃湯へ連れて行くことにして、妻と三人で四街道を5時30分に出発。幸乃湯到着は8時30分。母を降ろしここで沢支度をして白湯山林道のゲートへ。
ここのところ猛暑が続いているが、今日は標高800mでも蒸し暑い。私たち夫婦がゲートの前で支度をしていると沢装束の男女二人連れが下山してきた。女性の方が右腕を負傷している様子。男性と話を少しする。転んだとのこと。井戸沢には2パーティーが入渓中と教えてもらった。
三斗小屋宿を経て例の堰堤まで行く。堰堤は左側から登りトラロープをフィックスする。支点は仮止めしてあるだけだから、大きな荷重はご法度。そうしていたら後続パーティーがやってきた。私たちを含めて4パーティーが井戸沢に入っていることになる。これほど多くのパーティーが井戸沢にはいることなどかつて経験したことがない。
いつもの通り、F1、F2、・・・と遡行していく。ここのところ天気が良いせいか苔が育って岩が滑る。通常はビレイしない滝も含めて全ての滝でビレイを行う。特に赤い15m滝はランナーがとれるので私のリード時も妻にビレイしてもらった。滑って不意に墜落する可能性が少なくないと考えたからだ。いつもの通り、1390mの二俣まで休まずに登る。
1390m二俣で大休止。湯を沸かし味噌汁、おにぎり、カップ焼きそばを食す。心地よい風が吹きあげ山にいることの幸せを実感する。
1390mから沢幅は狭くなり、ルンゼ状の小滝がいくつか連続する。右からいくつかの枝沢が流入する。
やがて水涸れ。
このあたりは井戸沢の登高でもっとも苦しいところだ。夏の太陽がじりじりと照りつけ、風も止んでしまって蒸し暑い。
沢すじを忠実に詰めていくといつもの踏み跡にたどり着く。ここで母に電話。Formaは通じず。MovaならOK。
14時半なので4時間後の18時半には幸乃湯へ迎えに行けそうだと連絡した。
電話を終わって遠くを見ると栃木県側に黒い雲がある。遠くに雷鳴が聞こえている。草原状の稜線で雷に遭遇したくない。雷雨が来る前に大峠まで下山しておかないとまずい。休憩もそこそこに流石山へ向かい、ここでハーネスをザックにしまう。40分ほどで大峠に到着。雷雨の前に大峠に到着できて一安心。ザックをおろし、例のごとくザックの中身を店を広げるがごとく散らかしてから握り飯を口にいれたところで、急に暗くなり、冷たいが風が栃木県側から吹き始めるのと雨が落ちるのはほぼ同時。
来るぞ、逃げろ!
散らかした荷を大急ぎでザックに詰め込む。
腰をおろしてから5分間の出来事。稲妻が光り、雷鳴が鳴るまで1秒。走って樹林帯へ下る。全てに動作の速い私はおにぎりを食べ終わっていたが、のんびりした妻はおにぎりを口に頬張ったまま走った。それだけ緊迫した一瞬だった。
雷雨が続いたのは20分間。
陽が射し始めた。峠沢を渡る。この近辺の森は保水能力が高いようで、この程度の雨では増水は全くなし。
さて会津中街道である。峠沢の徒渉点から実測徒歩2分。昔からある道標が目印。「三斗小屋宿」と指し示している道が「会津中街道」である。歩き始めから歩行しやすいが、雨後の為かところどころでぬかるみがあってくるぶしまで泥に埋まった。
やがて「中の沢」を渡る。ここは飛び石伝いに容易に対岸へ渡ることができる。ここから道は少し上り坂になって下りはじめる。昔の林道跡のようなところに道はつけられており、非常に歩きやすい。苦土川の徒渉点までもジグザグに折り返してきれいに道は下っている。苦土川の徒渉点には仮設の丸木橋がかかっていた。先月はなかったからこの一カ月の間に設置されたものであろう。丸木橋を渡って対岸の斜面を登るのかと思いきや、斜面にはあがらず、川岸をヘツるようにして20mほど下流へ進む。すると会津中街道は右岸に続いている。ここまでくれば通いなれた道で一安心。ここから三斗小屋宿までは10分ほどだ。
三斗小屋宿に到着。大峠を出発してから1時間10分である。峠沢を下降したらここまで2時間近くかかるだろう。あっけないほどに近く早い。
白湯山林道のゲートで車を回収し、母の待つ幸乃湯へ。森の中の木々に囲まれたほの暗い露天風呂にライトが点燈している。湯につかって体の力を抜いて今日一日の山のことを思い返していると「カナカナカナ」とヒグラシが鳴いている。なかなか風情がある。
しばらくすると夕立だ。
スーパー池上に立ち寄って黒磯インターから家路についた。
四街道の自宅に帰着したのは21時43分。
缶ビール(本当は発泡酒)を飲んで就寝した。


三斗小屋宿 9:56
1390m二俣 12:04-12:33
稜線 14:36
流石山 14:50-53
大峠 15:29-35
峠沢徒渉点 15:56
会津中街道分岐点 15:58
三斗小屋宿 16:48

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周辺の記録
2010年6月19日の井戸沢遡行記
2007年5月27日の井戸沢遡行記
2006年9月30日の井戸沢遡行記
2006年9月24日の井戸沢遡行記
2002年6月15日の井戸沢遡行記