2010年 初夏

男鹿山塊 那須

苦土川 井戸沢

2010/06/19

上流部1390m二股手前のナメ滝

今週末は母のリクエストで那須へ行くことになった。板室温泉の幸乃湯の打たせ湯がお気に入りなのである。
しかし週間予報は向こう一週間の雨天を知らせていた。七千山水源の森でキャンプをするつもりだったから、雨の予報に中止を決めかけていた。
私の中止の意向に母は幸乃湯に宿泊してでも行きたいという。そこまで望むならということで予約を入れると今週はすでに満室とのこと。母はがっかりしている。
そこで、日帰りで往復することになった。
雨さえ降らなければ井戸沢を遡行したいと希望していたが、この天気予報ではとても無理な相談だ。

6月19日(土)曇り

今日は妻の誕生日。
二時半に目が覚めた。
外に出てみると強い風に乗った雨粒がポツリポツリと頬にあたる。更なる天候悪化が予報されているので、井戸沢はあきらめざるを得ない。となれば4時に出発する必要もないので妻を起こさず24時間営業のスーパーマーケットへ買い物に行く。5時になったので妻と母を起こし母が幸乃湯で湯治をしている間に妻と私は雨傘を差して散策をし、その後アウトレットで誕生日の記念に買い物でもしようというつもりで出発した。
6時の出発だったが首都高速に渋滞はなく板室黒磯ICを経由して戸田交差点にあるスーパー池上へ到着したのは8時40分。雨は一向に降らない。簡単な買い物を済ませ幸乃湯へ向かう。薄日さえ差し込み始めた。
これは井戸沢に行ける。そう判断し母を幸乃湯で降ろす。
白湯山林道のゲート到着は10時。沢歩きの装備は十分にそろっていないが、ハーネス、ロープ、ヘルメットは車に積んである。それらをザックに詰め込んで林道を歩き始めた。三斗小屋宿まで小一時間。
三斗小屋宿から那珂川へ下り始める右カーブの正面に新しい林道が続いている。これが噂の堰堤建設時に開削された林道らしい。この新しい林道を進む。
少し行くと林道の右端に小さな立て看板。
近寄って読んでみると「平成21年に会津中街道を刈り払いした」との記述がある。20数年前に千葉県山岳連盟のメンバーと井戸沢を登った時に数人が途中で中街道を選択し下降した。笹やぶの繁茂が著しいとの話を聞いた。
それ以降、井戸沢の下降路に中街道を使うという選択肢は私の頭の中からは消えた。それでも峠沢や中の沢を下った時に苦土川本流の1120m付近から右岸の河岸段丘にかすかに残る会津中街道の踏み跡を毎回使ってはいたが。
井戸沢に新しく作られた堰堤まではすぐだった。大きな堰堤だ。コンクリートの表面をログハウス風に装飾している。更に上流部にも堰堤を作るつもりなのだろうかと不安になる。
空を見ると雨の降り出す気配はない。遡行を開始することを決める。堰堤の下で入渓の準備。
堰堤は左側を越えたが、まだ踏み跡がしっかりしていない。
ひと登りして3m滝を越えるとすぐにF1だ。井戸沢ではこの滝だけが登れない。右のリッジを高巻くがオーバーハングしているので慎重に登り、妻をビレイする。巻き道から沢への下降路がはっきりしない。
F1の上から滝が連続する。赤茶けた花崗岩の滝が連続する様はまるで黒部川源流の赤木沢のようでもある。
ときおり雲間から陽の差し込む中、大きな滝やナメ滝や階段状の滝などを次々に越えていくと標高1390m地点で二俣となる。
ここには椅子にするには丁度よいテーブル状の岩があって、いつもここで休む。今回も遡行を開始してから初めての休憩。湯を沸かしカップ麺を食べる。妻はいつもの通り日清カップヌードル「チリトマト」、私は新製品の日清カップヌードル「ミートキング」途中で交換して食べる。
1390m二俣で一応、主な滝場は終わる。二股を右へ入っていくと、ここからは源流の様相となり両側に灌木が迫って沢は浅いルンゼ状の小滝を連ねる。しかし今年は少し様子が違った。
1430mの奥の二俣周辺には雪渓が残っていた。傾斜が緩いのでステップを切るまでもない。雪渓は数十メートルほど続いたが、それより上流部には雪は残っていなかった。
やがて沢は岩屑の堆積した登りづらい溝となる。ぎりぎりまで流水溝を登り詰め、左の登りやすそうな斜面へ移って数十メートル登ると踏み跡に出会う。草原のようにも見える笹原を5分ほどの登り詰めると稜線の登山道に出る。
下山時刻がかなり遅れそうなので携帯電話で母と通話を試みる。過去、ドコモのMovaで幾度となく源流部の詰めで通話したことがあるので安心しきっていたが稜線まで出てしまうとFORMAでは通話はできなかった。晴れていれば稜線からは会津田島の集落を見下ろせるので当然通話可能だろうと思っていたが、適わなかった。通話をするには井戸沢源流部の斜面にいる段階で行わなければならないようだ。
大峠で大休止。ザックを下ろし、水を飲む。19時には幸乃湯へたどり着くつもりだったが20時になることが確定的となった今、一刻も早く下山しなければならない。下降路には選択肢が四つある。井戸沢の滝を登っている時から下降路としてどのルートを選択するか考えていた。
そして選択したのは峠沢経由。はっきり言って失敗作。峠沢が歩きにくいボロ沢だというのはわかっていたのにその記憶が薄れていたのだろう。2時間を要した最低の下降となった。
三斗小屋宿へたどり着くころには日も暮れた。心配する母を一刻も早く安心させようと白湯山林道は私が先に走って下り、幸乃湯で母を迎えてから再び白湯山林道のゲートまで戻ることになった。一本道の林道なので夜道とはいえ妻も迷うことなくのんびり下れるだろうと思ったのである。
首尾よく母と妻を車に乗せ家路に着いた。
ワードカップオランダ対日本の試合をラジオで聞きながら東北自動車道を走った。
6回目の井戸沢遡行だったが、何度登っても良い沢だと今回も思った。早いうちに会津中街道を下降路として使ってみたい。
ここのところ連続して山へ入っているせいか、あまり疲れを感じないのがとてもうれしい。


四街道 6:08
戸田交差点(スーパー池上) 8:45-9:05
幸乃湯 9:15-9:30
白湯山林道ゲート 10:00-10:30
三斗小屋宿 11:19
新しい堰堤 11:21-11:55
二股(1390m) 13:57-14:18
奥の二股(1430m) 14:27
稜線 15:56-15:59
流石山 16:08
大峠 16:54-17:04
峠沢下降点 17:23
三斗小屋宿 19:18
白湯山林道ゲート 19:48
幸乃湯(母ピックアップ) 20:05
白湯山林道ゲート 20:25
四街道 23:35

周辺の記録
2007年5月27日の井戸沢遡行記
2006年9月30日の井戸沢遡行記
2006年9月24日の井戸沢遡行記
2002年6月15日の井戸沢遡行記


うわさの堰堤
丸太でカモフラージュしているがコンクリート製である



F1の巻き道で



登りやすい滝が続く



やさしいけれど高さがあることを忘れてはならぬ




この滝は傾斜はゆるいが滑るので要注意



1390mの二股での休憩

1390mの二股の上で


雪渓を行く

源流部の浅いルンゼを登る