2010年 夏

秋田 森吉山

桃洞沢・赤水沢周回

2010/07/10--12

桃洞沢 男滝

6月15日の昼過ぎ、敦子からメールが届いた。
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On Tue, 15 Jun 2010 13:41:57 +0900 (JST)
7月のシフト
10(土)明け、11(日)・12(月)連休
26(月)明け、27(火)・28(水)連休
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たったこれだけのメールだが、山へ行こうという敦子からの誘いだ。
27日は会議があるので休暇は無理。したがって12日に妻と休暇をとって10日から12日の三連休で行こうと返信した。
あいにくの梅雨時で悪天候でも対応できる柔軟性のある計画が必要だ。
具体的に五つの詳細な計画書をまとめたが、直前になって集中豪雨が続き特に西日本から関東甲信越にかけて大きな被害がでていることをニュースは伝えている。梅雨前線の動きなどを見ながら選んだ計画書は森吉山のもの。天気が良ければ桃洞沢、雨が降ったら登山道から森吉山。最悪の天気でも阿仁の村々を訪ね歩き温泉に入ることができる。
昨年の夏山合宿で妻と朋子の三人で訪れた森吉山。キャンプ場も素晴らしかった。敦子にも体験させてやりたいとも思ったのである。

7月10日(土)曇りのち雨

夜勤明けの敦子は昼前の11時に帰宅。敦子の支度が終わるのを待って、12時半に四街道を出発。
盛岡IC18時50分。イオン盛岡で追加食糧などの買出し後、小雨の降る中、田沢湖経由で秋田縦貫鉄道に沿って北上。21時、阿仁前田着。完成した森吉山ダムに沿ってクマゲラエコーラインを走る。ダムにかかる橋のところで、通行止め。係員のお兄ちゃんによると土砂崩れで通行不可だという。今夜、森吉山親子ふれあいオートキャンプ場に泊まることはおろか、明日桃洞沢へ入渓することすら困難かもしれない。
長時間の運転疲れもあり一刻も早く横になりたく、森吉山ダム資料展示館の駐車場の街灯の下にテントを張る。食べごろに解凍された豚バラを鉄板焼きして酒を飲み就寝。幸いにも雨はあがった。

7月11日(日)晴れ曇りのち豪雨

早くに目が覚めた。薄日が差し込みまずまずの天候。
一人で通行止めの場所まで車で行く。係員のお兄ちゃんは一人で徹夜で立っていたようだ。聞けば8時には通行止め解除になりそうだという。計画よりも3時間遅れの桃洞沢入渓時刻となるが、入渓に目処が立って一安心でテントに戻る。
妻と敦子を起こす。
山行用に一年以上前に買った賞味期限の切れたラーメンが朝食。山行用に購入したこの手の食材が使われないままに不動在庫として山道具の中に埋もれていることが間々ある。気の向いた時に私が評価下げを行い、休日の朝食などに流用してその都度処分してきたが、今回のラーメンは、それに漏れていたらしい。
テントを撤収し8時前に出発。
通行止めとなった場所には流木と土砂が堆積していたが、8割ほど撤去が終わっていた。森吉山荘の少し先で右折。この道は昨年の夏山合宿の際に何度も往復した道である。
9時、野生鳥獣センター到着。駐車場にランドクルーザープラドが一台。所有者らしき60歳代とおぼしきおじさんが話しかけてきた。あれこれ話すうちに秋田県山岳連盟関係者とこと。私の推測だがハッピーリタイア後に鳥獣センターの臨時職員として協力しているようだ。
9時半、渓流シューズを履いてセンターを出発。
昨年8月に訪れた際には、蚊の最盛期だったようでひどい目にあったが、今回は7月初旬。蚊は全くと言っていいほどいない。
桃洞沢と赤水沢の分岐点まで遊歩道だがぬかるみがあるので長靴が望ましい。分岐点以降も整備された道だ。
駐車場から1時間ほどで桃洞滝の下へ到着。
昨年よりも水量が多い。
一見したところ登攀不可能に見える桃洞滝だが左岸にステップが刻んである。これをたどって難なく滝の上に到着。桃洞滝の上からいよいよナメのオンパレードが開始される。
難しそうな滝も注意深く見るとどこかにステップが刻んである。そのステップが風化によって心もとない状態のこともあるにはあるが、なんとかつなぎながら上流を目指す。
桃洞沢のハイライトのひとつである男滝は向かって右側に不明瞭ながらもステップが刻んであり、終了点にはアンカーが設置されている。桃洞沢で唯一ロープによるビレイを行った滝だ。
間もなく赤水沢へ乗り越すコルへ突き上げる沢が左から入ってくる。左右から灌木がおおって貧相な出合だ。昨年はこの出合に気がつかず相当上まで登ってしまい引き返した経緯がある。
赤水沢へと向かう沢へ入る。ところどころで倒木が土砂をせき止めている場所や灌木がかぶっている場所はあるものの基本的にはナメが続く。どんどん登っていく。
しばらく行くとナメが終わり小さく沢は蛇行し藪もうるさくなる。すると6m滝に突き当たる。正面は登れず、右を巻く。斜面がドロで滑るので灌木にしがみつくようにして越える。
この滝を越えると再びナメとなり稜線までそれは続く。
たどり着いた稜線にはブナの大木が茂り、奥只見の袖沢乗越のようだ。ただし袖沢乗越のような踏み跡はない。このルートも近年遡行者が増えているようだからそのうち踏み跡もはっきりしてくるだろう。
稜線から反対側の斜面を下っていく。すぐに岩盤が露出しナメとなる。次第にナメの幅が広くなり、ところどころで滝が現れ始める。
「このナメ滝、どうやって下るの?」と敦子
「トトトッて、勢いをつけて走って下るんだよ」と妻
「うそー、そんなの怖くてできないよ」と敦子
「じゃぁ行くよ」といいながらトトトッと走って下る私と妻。
敦子はへっぴり腰で岩に張り付いていたが意を決して「わー」と声をあげながらトトトッと走り下りた。こんなことを数回繰り返しながら30分ほど下っていくと赤水沢の本流に合流。合流点には腰を下ろせるような岸辺があり湯を沸かしてコーヒーを飲む。
赤水沢の本流は二回の懸垂下降で兎滝の上にたどり着く。兎滝自体は傾斜も緩く歩いて下れるかも知れないほどだが、その手前に2段の滝がある。上段のものが懸垂ピンとなる灌木がない。去年も左岸を高巻いたが今回も高巻く。この高巻きが桃洞沢・赤水沢周回コースで最も危険なセクションだろう。
兎滝はステップが刻んであるし傾斜も緩いが灌木に残置スリングがあるので、これを利用して懸垂下降。50mのシングルロープでOKだったから懸垂距離は23m程度だろう。
梅雨時ということもあって水量が多い。兎滝から下が結構長い。舗装道路のようなナメの連続だが、ところどころに深い穴があり、それなりに注意しながら歩かないといけない。いささかナメにうんざりし始めたころ、ようやく玉川温泉からの登山道を左岸に認めることができた。もうすぐだ。
野生鳥獣センターの駐車場に戻り着いたのは17時。
駐車場には朝方のランドクルーザーが一台だけ。ひょっとすると今日のお客さんはほとんどなかったのかもしれない。
蓮舫に知れたら事業仕訳されてしまいそうな話だ。
朝方会ったランドクルーザーの持ち主のおじさんがにこにこしながら待っていてくれた。
挨拶をして車に近づくと車がピカピカになっている。
おじさんが何か敦子に話している。秋田訛りで最初は意味が良くわからなかったが、おじさんが洗車してくれたらしい。
仰天!
何とお礼を言っていいものか。
汗びっしょりなので、まずは阿仁前田まで行って温泉に入り、スーパーマーケット「丸伊」で買出しだ。30kmほども離れた阿仁前田駅前まで車を走らせる。途中から雨が降り出した。「クウィンス森吉」で汗を流した後「丸伊」で肉や野菜などを買う。ミズがあったのでこれも買い物かごに入れた。
暗くなったクマゲラエコーラインを森吉山まで戻る。走っているうちに土砂降りの雨となった。風も強い。親子ふれあいオートキャンプ場に到着した頃には暴風雨。テントを張り、鉄板で焼き肉をしてミズを炒める。特にミズは最高だった。
猛烈な暴風雨は朝まで続いた。

7月12日(月)曇り時々雨

5時起床。起きた時にはまだ暴風雨状態だったが、撤収を始めるころには雨があがった。
7時出発。
名残惜しい阿仁との別れ。未練がましく阿仁前田駅や阿仁合駅、道の駅などに立ち寄りながら車を走らせる。道の駅では1kgのミズの束が200円!もちろん買った。
田沢湖で再び暴風雨。さらに葛根田川に近い小岩井農場を見学。どうにも秋田岩手と離れがたい気分になってくる。
とはいっても明日からはまた仕事。13時小岩井農場の一本桜からハンドルを千葉へと切ってアクセルを静かに踏んだ。


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周辺の記録
2009年我が家の夏山合宿 大深沢&桃洞沢