最近の雑誌とカタログから

岳人2009年5月号

1月3日に骨折した左脛骨骨幹部の治癒にもう少しかかりそうなので久しぶりにホームページでも更新してみたいと思う。
岳人に掲載される記事は毎号なにかしらのコメントをしたくなるようなものがある。本日発売の通巻743号には何があったのかな?

GAKUJIN_NEWS・・・高所登山の実践的研究者 原真さんが急逝

3月20日原真氏が亡くなったという。
今回久しぶりに記述したくなったのはこの訃報による。
私が山登りを始めた初期の頃に強く影響を受けたのが、先年亡くなられた石岡繁雄氏と原真氏である。特に高度障害と凍傷治療においては原氏の著作の影響度は大いなるものがあった。
このような実践的な影響以外にも登山への取り組み姿勢といった、山登りの襟を正すような指摘にも感銘を受けた。
辛口の論評で時にギョッとするようなこともあったが、真実を突いているだけに納得せざるを得なかった。これがまた私を引き付けた。
「登山のルネッサンス」と「快楽登山のすすめ」はすべての登山者に対して一読をすすめたい好書だと思う。

BOOKS海外・・・ROCK and ICE

岳人の諸記事の中、毎号楽しみにしていてまっさきに読むのが高井一によるこの「BOOKS海外」の記事である。
高井一というのはペンネームで海津正彦氏であることは周知のこと・・・そう、あの海津氏である。
海津氏についてここであらためて記述することは控えるが、クライミングがわかっている人物が記述する文章の典型として私は岳人誌で最も価値あるものだと思っている。
さて、今号をわたくしが取り上げたのは登山の写真についての海津氏の思いと私のそれが全く一致していることに、「わが意を得たり」と膝を打ったからである。
要約すると
日本の山岳雑誌で山岳写真コンテストが行われているが、そういう場に出てくる写真は風景写真である。氏が興味をそそられるのはそのような風景写真ではなく行動中の登攀者を撮っているものである。
というような記述のあと、アメリカの山岳雑誌「ROCK and ICE」最新号の写真特集に掲載されている「金になる写真」を撮るための16項目を紹介している。ちなみに列挙してみよう。
1.巨大画素数 2.RAW対応 3.鮮明 4.遠近法 5.1/3の原則 6.表情 7.動きをとらえる 8.四肢を入れる 9.余計なものは省略 10.着衣で 11.色彩に配慮 12.真昼は昼寝 13.構図の変化 14.人工補助光 15.厳しい編集 16.何もかも忘れる

さて、「金になる写真」と表現されているところに一つの割り切りがある。山岳雑誌の写真コンテストのほとんどは退屈であるという意を込めているように感じるのは私だけであろうか。少なくとも私は同意するものである。
実際に激しい山登り経験のある者にとって興味をひかれるのは山岳風景写真ではなく登攀者の心理描写に踏み込んだ写真なのかもしれないなどと思う。

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