最近の雑誌とカタログから

岳人2004年5月号

5月と言うとゴールデンウィークの為の特集が山岳雑誌の定番である。でもそのような定番特集ではないところにオジサンは興味をひかれるのである。

フリークライミング用具の系譜5・・・森正弘

元々クライミングに詳しいのでクライミング関連のページに目が行ってしまう。著者である森正弘氏を最初に知ったのは岩と雪のグラビアページだった。御在所岳のフリー化の記事だった記憶がある。当時の森正弘氏は坊主頭のまだあどけなさが残っているような少年だった。その時の印象は、なるほどこれ程までに入れ込んでいるのかぁ、それにしてもこの坊主頭の少年は肩に力が入っているなというものだった。
先月号からこの連載があることに気がつき4月号5月号と続けて読んでみた。書いている内容には納得できた。
そして笑ったのが4月号での麻のザイルを直接体に結びハーネスを使っていなかったという記述と5月号の肩がらみでリードの墜落を止めたことがあるという記述である。二つとも冒頭に配置されている。もちろん事実だろう。ただこの記述は読者に「森氏は大昔のクライマーか?」と思わせるような記述でもある。ただそれだけのことだが、そのような解釈を読者がするにも関わらず、このような記述をしてしまう森氏の姿勢に人間としての共感を覚え微笑んでしまうのである。
さて記述内容に関しても多少の見解を記しておくことにしよう。
日本におけるビレイ研究に関しては石岡繁雄氏おろそかにすることは出来ない。氏の執念はすさまじいモノで一部は岳人誌上でも繰り返し記載された。日本のクライマー達はこの警鐘をどのように受け止めたのか?ほとんどが理解できなかったのではあるまいか。それが証拠にシュテヒト環を使っていたのは少数派で、一般のクライマーは肩がらみを行っていた。シュテヒト環を使っていたのが少数派とは言え真剣にクライミングを考える人は肩がらみによるボディビレイはしていなかったと思う。
なお図1-1にあるようなしっかりした支点がある場合には肩がらみではなく支点にイタリアンフリクションヒッチをセットすべきである。

「奥鐘山西壁正面壁トカラルート」開拓・・・廣川健太郎

私のような偏屈オジサンはこのような新ルートのチェックをいつもしているのである。これは岳人に限らず全ての雑誌で最初に目を通すのがクロニクル蘭で、岩と雪時代からそれは変わらない。
廣川氏は今の時代にふさわしくないルートになってしまったと謙遜しているが、ルート開拓を次に登る人達が楽しめるように意識して環境整備しているのであればそれにこしたことはないと思う。
そういった意味でもし打たれたボルトがフリークライミングでのトライを意識したステンレスハンガーボルトで、ビレイステーションが整備されていれば最高である。なお、このラインを正面壁と呼ぶのはちと苦しいと思う。普通は中央ルンゼや紫岳会ルートは正面壁とは呼ばないのではなかろうか。

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