2009年 夏

吾妻連峰

東大巓

2009/6/20-21

水芭蕉の金明水

敦子が、今週の土日の二日間休めるという。そこで一泊で朋子も加えて三人でどこかへ行こうということになった。
素直は受験生だからだめ。二日くらい山へ行ったからといって大した差は出ないかもしれないが、とにかくだめということらしい。
さて、どこへ行くかということだが、今年正月の事故で左脛骨の螺旋骨折の患部にチタンパイプが入っており下降路に不安を隠せない状態でチョイスするとなると穏やかな山ということになる。休日の高速道路料金が1000円になったこともあり、思い切って東北の山へ行ってみることにした。選んだ山は吾妻連峰。高校二年生の1972年夏に山形インターハイの山岳競技選手として参加し登った山である。
とても楽しかった思い出の山だ。あの夏は山岳部の夏山合宿で念願の裏銀座槍穂高を終えて、一人前の登山者になったつもりになっていた。開会式は米沢。盛大な歓迎式典が催された。そして槇有恒氏の講演。私は講演の途中にうとうとしてしまった。隣に座っていた山岳部の顧問の浦壁先生に脇腹をつねられて目が覚めた。今にして思えば真剣に聴かなかったことが残念でならない。板谷の小学校では小学生の鼓笛隊の歓迎を受け白布温泉に泊まった。板谷からぬかるんだ林道を歩き五色温泉、滑川温泉、大滝、姥湯と歩いた。その後、兎平野営場をベースに周辺を歩いた。
そんな吾妻連峰だが、現在の私に歩けるコースは限られている。選んだのは滑川温泉から東大巓の往復。途中の弥兵衛平の明月荘に一泊する楽なコースである。

6月20日(土)曇り

前日の19日は21時過ぎに四街道を出る。0時40分福島飯坂ICをおりて国道を走る。峠駅にてステーションビバーク。敦子と朋子は車の中で就寝したが私と妻はホームにマットを敷いて寝た。屋根付きですこぶる快適なビバークとなった。
朝起きて、いつもの通りぐずぐず支度をしていたら新幹線が通過していった。子供達もびっくりしている。車で滑川温泉へ向かう。温泉の100mほど手前の空き地に車を止めて朝食。
福島屋旅館の脇を通ってつり橋を渡り、樹林帯の中の歩きやすい登山道を登っていく。ピンクのユリの花が咲いている。妻が花の名を聞くので「たぶんヒメサユリだと思う」と答えた。下山後調べたらはたしてヒメサユリだった。大滝展望台から大滝を見ようとしたが、木々にさえぎられてよく見えない。インターハイの時も同じようによく見えなかったことを覚えている。緩やかな道が続く。トロッコ軌道跡を歩き、美しい樋木沢を渡って姥湯への分岐に至った。1972年にはここから姥湯方面へと下ったのだったかと思う。そして間もなく大滝沢の最源流部を渡る。すぐ上流には潜滝がある。やがて登山道は弥兵衛平直下の急坂となる。丸太を組んだ階段状の坂道は歩きやすいがブヨがまとわりつき始めた。虫よけスプレーを持ってこなかったことを後悔しながら我慢の登りが続く。やがて道は傾斜を緩め弥兵衛平の一角に達したようだ。木道をたどっていくと金明水と呼ばれる泉に到着した。小さな湿原になっており、水芭蕉がある。妖精でもいそうな素敵な場所だ。ザックをおろし金明水の水を汲む。10リットルの水を補給しさらに登っていくと雪渓の中に木道うまってしまった。大きな雪田である。踏み跡もほとんど見当たらないので慎重に登っていくとうまい具合に明月荘へと向かう登山道を見つけることができた。
そこから名月荘はすぐだった。もう17時を過ぎているので東大巓の山頂を往復するのは明日にして山荘の中に入った。小屋の中には1階に一人と2階に夫婦連れが1組。私たち家族は2階に陣取る。広い小屋なのでのびのびとできる。夕食は最近の定番になりつつあるハウスザカレー。玉ねぎとベーコンを入れた。それからシャウエッセンソーセージ。私はカワハギを焼き、ごろりと横になって紙パックの菊正宗を呑む。どっと疲れが出た。
夜半から雨が降り始めた。かなり強い雨のようだ。小屋の屋根を強くたたいている。

6月21日(日)雨のち曇り

強い雨が降り続いている。
途中の沢が増水しているのではないかと心配になる。東大巓の往復は中止にする。
8時半過ぎ、雨具を着て山荘を出る。足早に下山だ。濡れた木道は氷のように滑る。幾度か尻餅をついてしまった。無言で歩く。雪渓を横断し、金明水も通り過ぎる。幸いにも小雨となり途中で雨具を脱いだ。沢は増水していたが、濁りは出ておらず無事通過。一つ目の沢、二つ目の沢もOK。
姥湯への分岐を過ぎて樋木沢を渡って腰を下ろした。ここからはもう安心。ヒメサユリを写真に取りながらのんびりと滑川温泉へと下って行った。
福島屋で汗を流し、福島飯坂IC近くのファミレスで食事をとり家路についた。

20日 福島屋 11:14 21日 明月荘 08:35
鉱山跡 13:48 潜滝 10:00
樋木沢 13:52-14:21 樋木沢 10:27
姥湯分岐点 14:31 福島屋 12:35
潜滝 14:51-15:01
金明水 16:36-16:48
雪渓 16:49
明月荘 17:08


鉱山遺物



明月荘直下の雪渓



今宵の宿となる明月荘



雨の明月湖



二階建ての清潔な小屋である



下山の時、増水していなくて安堵



絶滅が危惧されているというヒメサユリ

入浴後、福島屋旅館の玄関で