2008年 春

奥多摩

御前山

2008/04/20

湯久保尾根の仏岩周辺を登る

来週に控えた穂高での春山合宿に備えて体力トレーニングという意味もあって、今週も妻と二人で山歩きを計画した。
事前の計画では青梅線の古里から越沢バットレスを訪れて御岳山へ登る予定であったがまったく違うコースになってしまった。
実際に歩いたのは、秋川渓谷方面から湯久保尾根を登って御前山へ登り鋸山林道を下って奥多摩駅へ出るコース。標高差1100mとなかなかしんどいコースだが静寂な尾根歩きとカタクリの花を楽しむことができた。

4月29日(火)曇り時々晴れ

4月からナースとして病院勤務を始めた敦子の帰りがいつも遅い。病院まで自宅から自転車で10分。朝7時半に病院に入り、通常の帰宅時間は23時。カンファレンス、一日のまとめ、翌日の準備、そして新人ナース相互による自己啓発のための勉強会。昨夜などは帰宅したのは深夜2時半だった。毎夜、妻はリビングで敦子の帰宅を待っている。敦子にとっては大変だろうが、ハードな臨床経験によって彼女は大きく成長することだろう。
そんな敦子や朋子、素直の朝食の仕度をして妻と静かに家を出た。

四街道6時37分発「特急しおさい2号」に乗ると新宿発7時44分の「ホリデー快速おくたま 1号」に間に合う。
新宿駅で「おくたま1号」の空席を探して妻と二人で並んで座った。三鷹、立川と電車が停車するたびにたくさんのハイキング客が乗り込んで、車両は満員になった。
この電車は先頭4両が「あきがわ1号」で後ろより6両が「おくたま1号」との車内アナウンスが流れた。私たち夫婦が座っていたのは先頭から3両目。すなわち「あきがわ1号」らしい。電車は拝島で分割され、「おくたま1号」は奥多摩へ、「あきがわ1号」は武蔵五日市へと向かう。
拝島で「おくたま1号」に相当する車両へ乗り換えると奥多摩まで1時間ほど立ちっぱなしになりそうだ。このまま座っていたいので武蔵五日市へ行くことにした。
8時48分終点の武蔵五日市に到着。駅の売店で食料などを買っている間に、ハイキング客を満載した何本かのバスが駅前から出発していった。
さて、私たちはどこへ行こうか。バス乗り場へ行くと次のバスは藤原行きだという。藤原行きのバスに乗って行ける山を選ぶ。チョイスしたのは御前山。1972年5月に小河内ダムから一度登ったことがある。今回は秋川側から登れるチャンスだと考えたのだ。自宅にいる朋子にコース変更を電話で知らせる。
9時24分発のバスはハイキング客で満員だ。登路に選んだ湯久保尾根の取り付き点である「宮ケ谷戸」バス停で下車したのは私たち夫婦ともう一人だけ。
八重桜や山吹の咲く宮ケ谷戸集落はのどかな山里である。北秋川の流れを橋で渡ると「御前山」の標識がある。途中の民家で水を分けてもらい登り始めた。
天気予報では絶好の行楽日和とのことだったが曇り空がひろがって、ときどき陽が射しこむ程度で肌寒いほどだ。
奥多摩の山は杉の植林地が多いがこの尾根も杉木立の中を登っていく。
しばらく登っていくと露岩帯となる。おそらく地図にある仏岩であろう。8割方は薄暗い杉林の中の登高であるが、時々ブナやクヌギの落葉樹林帯の中を歩く。これらの木々は今ようやく芽吹きを迎えたところで、林床まで陽が射し込む。そんな落ち葉の広場に妻と座り込んでしばし憩う。おりしも日が射し込んでぽかぽかと暖かい。座敷の縁側の陽だまりに座っているかのようだ。
今回御前山への登路に選んだ湯久保尾根は、標高差1100m。途中のアップダウンはさほど大きくはないが全体的に長い。毎夜、敦子の帰りを待って睡眠不足の妻にとってはかなりの負担だったようだ。
「お父さん、まだ着かないの?」
「もう標高差800m登って来たから、あと300mだよ」
そのような会話が幾度か繰り返され、御前山直下の分岐点に到着した。右に御前山避難小屋の屋根を見ながら階段状に整備された登山道を登っていくと御前山の山頂。
たくさんのハイキング客が楽しそうにくつろいでいる。山頂をあとにして御前山避難小屋へ行く。
この避難小屋の存在はかねてより知っていた。小さいながらも水場もあるログハウス風の小奇麗な山小屋。ボランティアによる管理によってこのような清潔な状態が保たれているのであろう。事実、私たちが昼食を摂っていると5人の都レンジャーが巡回にやってきた。
避難小屋をあとにして私たち夫婦は大ダワへ向かった。大ダワにはきれいな公衆トイレがあって舗装された林道を登ってきた乗用車が数台止まっていた。アスファルトに座り込んで妻と二人でよく歩いたなぁと話していたら、都レンジャーの人たちが下ってきた。どうやらここまで車で来たらしい。都レンジャーというようりもミヤコレンジャーという感じなのかも知れないとなんとなく思った。
自転車でもあったら楽チンだろうが私たちは徒歩で下るしかない。舗装された鋸山林道を歩いた。しかし鋸山林道は満更でもなかった。妻の話を聞きながら無心になって歩く下り坂の林道。下るにつれて木々は新緑の色を濃くしていく。
例年、この林道を利用して千葉県高体連の登山大会行われているとのことで、一昨日素直もこの林道を歩いている。この林道を経由して御前山まで1時間40分で歩いたのだという。
黄昏はじめた氷川にたどり着き、例の小路を歩く。下山後に細田さんと酒を呑んだ店。それから焼き鳥屋、餃子屋・・・・。それぞれの軒先にはザックが置かれている。奥多摩を歩く人たちの最後の締めくくりとして一杯やっているのだろう。
私たち夫婦もできれば立ち寄って行きたいところだが、遠路千葉まで帰らなければならないし、子供たちのことを考えるとそういうわけにもいかない。
私は奥多摩駅近くの酒屋で澤の井のワンカップを二つ、そして妻のためにお煎餅を買い求め、二人で青梅行きの普通列車に乗った。



洗車中のご主人に声をかけて水を分けてもらう。
小さな子供がやってきた。
「おじちゃん、なにしてんの?」


宮ケ谷戸集落を行く



杉林の中にモミの木が点在する



ところどころにある落葉樹林



御前山避難小屋



カタクリ



鞘口山周辺にて

鋸山林道を下る