2006年 晩秋

奥日光

刈込湖・切込湖

2006/11/11

冷たい雨の中、湖畔の道を行く妻

奥日光の山の中に刈込湖、切込湖という池がある。
四方を2000m級の山々に囲まれ、湖面の標高は1615m。
針葉樹の黒い森の中にぽっかりと広がった黒い瞳のような池。
あるいは湖面に真っ青な空を映し、草原を渡ってくる風にさざ波をたてている池。
いったいどんな池なんだろう。
いずれにしても神秘的な池を想像して、高校生の頃からいつかは訪れてみたいと思っていた。

11月11日(土) 雨

ここのところ、休日出勤の出張が続いていたので今週こそは山へ行くぞと楽しみにしていた。
久しぶりに妻も行けるという。
ところが天気予報では二つ玉低気圧が台風並みに発達して西高東低の気圧配置になって土曜日は大荒れだという。無難なハイキングコースに変更することにしてチョイスしたのが奥日光の湯元から刈込湖・切込湖を訪れて光徳牧場へ下って再び湯元へ戻るというコース。
吹雪いても何とかなるレベルの装備を整え車に積み込む。
妻は子供達の朝食の仕度をしなければならないので出発が少々遅れ、6時30分に家を出た。
5時間半かかって185kmを走行しちょうど正午に湯元の無料駐車場に到着。冷たい雨が降り始めた。
雨具を着て、さっそく歩き出す。
湯元の源泉から笹の生い茂った登山道を登り始める。雨脚が強くなり始めた。気温も下がって吐く息も白い。
あの池学さんが本格的な冬山でもスパイク付きのゴム長靴を使用していたことは有名な話だが、こんな冷たい雨が降るようなハイキングコースを歩くにもゴム長靴がいいかもしれない。
妻と二人で歩きながらそんなことを話した。
急坂がしばらく続いて一気に傾斜が緩んで峠らしきところに到着した。小さな岩小舎があるので、雨宿りをしながら昼食のカップラーメンを食べることにする。
岩の下の枯れ草は乾いており腰をかけて湯を沸かす。暖かいラーメンに体も温まった。
岩小舎から登山道は古い林道跡をたどるようになる。ほぼ水平で幅の広い林道だ。すでに閉鎖されてから何年も経過しているのだろうが、ちょうど良い具合に自然が復活しつつあるようで歩きやすい。岩小舎からすぐの窪地に沼がある。
気分良く歩いているとコースは林道から左手の斜面を下っていくようになる。木製の階段が整備された急な坂を下っていくと針葉樹林の隙間から湖面が見える。
刈込湖である。
ちょっと心躍るような足取りで湖面へと近づいていく。刈込湖の全貌が見渡せた。想像していたよりも大きな池だ。
冷たい雨に煙る刈込湖の湖畔に降り立った。ひときわ雨脚の強くなり湖面がぴちぴちと跳ねているように見える。写真を数枚撮っただけで先を急ぐ。湖畔の整備された平坦な道を切込湖へと歩いていく。刈込湖と切込湖は一つの池で、途中でくびれているに過ぎない。雨は相変わらず強く登山道の脇に数日前に降った雪が残っている。
ゆるく下っていくとほどなく涸沼である。かなり大きな草原になっていて、葉の落ちきった小さな落葉松がいくつか立っている。展望の利く休憩用のベンチがしつらえてあるが、東屋ではないので雨を避けることはできない。
涸沼から山王峠への急登もわずかに標高差100m。息を切らせながら登っていくと舗装された山王林道の一角に出て笹原の中の歩きやすい登山道をたどっていくと旧山王峠。ここから光徳牧場まで無数の金色の細い針のような落葉松の落ち葉をふわふわと踏みしめながらどんどん高度を落としていく。
「下山したら餃子の正嗣(まさし)へ行きたいな」
と私
「さっきカップラーメン食べたし、せっかく運動したのにこれ以上食べたら太るからいらないヨ。帰るまで何にもいりません。」
と妻
秋の日暮れは早い。雨の日であればなおさらだ。なんとなく薄暗くなってきた光徳牧場に到着したのはもう16時近かった。雨の中、閑散としている光徳牧場だが売店だけは営業していた。牛乳とかアイスクリームを販売している。
「アイスクリーム食べたいな」
と妻
私は訊いた
「ん?こんなに寒いのにアイスクリーム食べるの?」
「うん!」
「さっき太るからギョーザ食べないって言ってたような・・・」
「さっきはおなかが減っていなかったけど、今はおなかが減った。餃子?食べてもイイヨ」
「そうですか、じゃあ正嗣に行きましょう」
軒下のテラスのいすに座って妻はアイスクリームを食べる。私は湯を沸かしてドリップコーヒーを淹れた。
薄暗くなった舗装道路を湯元へと歩く。途中でヘッドランプを出した。普通なら遊歩道を歩くところだが暗くなったのでそのまま車道を歩いた。
真っ暗になった湯元の駐車場に帰り着いたのは17時20分。
晩秋の楽しいハイキング。
また来たい。フリートレックやスノーシューを使って雪のシーズンに歩くのも良いかもしれない。


四街道 6:30
湯元駐車場 12:17
岩小舎(小峠) 13:05--13:33
刈込湖 13:57--14:05
涸沼 14:50--14:58
山王林道 15:15--15:21
旧山王峠 15:23
光徳牧場 15:56--16:15
湯元駐車場 17:22
正嗣(今市店) 18:25--18:54
四街道 21:38


雨のせいで湯元の駐車場も閑散としている


40年ぶりに訪れる湯元の源泉


岩のひさしの下の枯れ草は乾いている


古い林道跡をのんびり歩く


コースは整備されている


刈込湖の湖畔


路傍には雪が


涸沼の上には山王帽子山を横切る山王林道が見える


山王林道に一瞬だが合流する

静まり返った光徳牧場