2006年 初夏

筑波山

境界尾根--男体山--松岩尾根

2006/05/27

松岩尾根の松岩の頭から男体山方向を望む

25日・26日と熱海で勤務先の合宿があった。
20年ほど前までは熱海で合宿というと会議とは名ばかりで実態は宴会目的の社員旅行というケースも少なくなかったが、近年は様相が一変。金曜日の夜に自宅に帰りついた時には疲れきっていた。
それでも敦子に
「明日、筑波山に行く?」と疲れ気味に訊ねると
「うん、行くー!」と元気な返事。
それでは行かずばなるまい。
先週のうちから次は「女の川」を登ろうと考えていたが、天気予報によれば午後から雨だという。せっかくならば「女の川」は晴天の日に登りたい。そこで、チョイスしたのは境界尾根。
この境界尾根は薬王院近くのみかん園からつくば市と旧真壁町の境界となっている尾根伝いに男体山へ登るもので、登山開始地点の標高が210mと、筑波山にしてはそこそこの標高差660mをもつ。

5月27日(土) 曇り一時雨

体が鉛のように重く、4時半に目が覚めたが5時30分まで起き上がることができなかった。敦子を起こし、自宅を出発したのは6時。
筑波山近くのいつものセブンイレブンで朝食の弁当を買うつもりで、車を走らせていると敦子が言う。
「セブンイレブンよりもローソンで買いたい」という。
確かにセブンイレブンよりもローソンの方が品揃えが良いと私も思う。セブンイレブンの数百メートル手前で、しかも反対車線にあるローソンだったが、ハンドルを切って立ち寄る。
がま公園からいつもの林道へ入り、酒寄近くのミカン園まで走り、林道の標高210m地点の路肩に車を止めた。いつ雨が降り出してもおかしくないような雲行きで、すでに男体山の山頂付近は雲に覆われ始めている。
ゆっくり身支度を整え、準備体操も念入りに行う。
車の中に置いてあったこうもり傘をザックに差し込んで歩き始めた。
林道からの登山道への入り口周辺は踏み跡も細く、ちょっと心配なるがすぐにトレールはしっかりしたものとなった。傾斜はゆるく、下草はあまり繁茂しておらずとても歩きやすいし、気分が良い。
しばらくして尾根の形態が明瞭になり始め、赤松の疎林の中を歩いていく。
30分ほど歩くと、左側の谷から沢音が聞こえ始めた。
まもなく、沢音は間近に聞こえ左側へ下る踏み跡がある。おそらく水場として利用しているものであろう。高度計は455mをさしている。
水場で休憩しようということになって20mほど下っていくと小さな沢に勢い良く水が流れている。
15分ほど休んで、尾根筋に戻り、1分ほど歩くと今度は右側に水場がある。こちらの方は登山道のすぐ脇にあって先程の水場よりも条件が良かった。高度計の表示は460mだった。
この近辺から、登山道は急に傾斜を増し始めた。一気に高度を稼いでいくという感じだ。しかしながら踏み跡は明瞭で安心して歩くことができる。
あたりはヒノキの植林地となり斜面には岩がごろごろし始め、さらに登っていくと、標高560m付近で大岩地帯に突入。一箇所だけ高さ1mほどの岩の段差がある。敦子はこれをまっすぐ登って行ったが、良く観察してみると、この岩の段差は左右に巻くこともできるようだ。
大岩地帯を抜けると植林地も終わり、再び気持ちの良い新緑の広葉樹林帯に戻った。ところどころに大きなモミの木があるのには驚かされる。
そろそろ筑波山自然研究路にたどりつくころかと高度計を気にしながら歩いていくと標高755m付近でコンクリートで舗装された筑波山自然研究路に出ることができた。
山頂近いこのあたりはガスに包まれ、深山の雰囲気が漂っている。
自然研究路は反時計周りに歩き富士見台の東屋で休憩。水を飲んでいると雨がぱらついてきた。
傘をさして男体山の山頂経由で御幸ヶ原へ下り、ロープウエイ駅舎の中で休憩する。乳白色のガスで視界はとざされ、肌寒い。
さて、下山ルートはどうしようか。国土地理院の二万五千図を出して考え込む。
登りに使用した境界尾根を下山してもよいが、できれば異なるルートで下山したくもある。車へ戻ることを考えると椎尾道を下るのが順当だろうが、それでは面白くない。そこで選択したのが松岩尾根。どのような尾根なのかまったく予備知識はないが、国土地理院の地図によれば、坊主山(710m)から西南西へ下っている尾根でミカン園と椎尾道の間の林道のどこかへ下ることができそうだ。これは車の駐車地点に戻るには好都合。
松岩尾根は椎尾道の665m付近から分岐したほうが良いようなので、まずは5月13日に歩いた椎尾道を下り始める。
相変わらずぱっとしない雲行きだが雨は止んでいる。
そろそろ松岩尾根の分岐地点に近い頃だと用心しながら左手の斜面を観察しながら歩いていると、かすかな踏み跡がある。高度計を見ると660m。松岩尾根への踏み跡はこれだろう。
広葉樹林の下の背の低い笹の中に不明瞭な踏み跡が続いている。さっそく下り始める。ときどき踏み跡が薄くなるので注意深く下っていく。
10分ほど下ったところで踏み跡は岩場に突き当たって消えている。トレースはこの岩場を左右いずれかに巻いているに違いないと、偵察をしてみるが、それらしきトレースはない。
どうやらこの岩場を越えていくようだ。
岩場はナイフリッジになっていて筑波山とはにわかに信じがたいような景観である。ちょうど小川山にでも来ているようだ。ちょっぴりスリリングなナイフリッジの上に立って爽快である。敦子も歓声をあげて喜んでいる。
ここがおそらく松岩の頭であろう。展望もすこぶる良く、素晴らしい別天地である。
この岩場を下ると、また踏み跡が薄くなった。落ち葉が堆積してトレースを隠しているのだろうか。どこでも下れるように見えるし、どこにもトレースはないようにも見える。注意深く樹林帯のなかを見ていると樹木に赤いペンキ印がある。どうも疑わしいが、かといって他に手がかりもない。仕方がないのでこの赤いペンキ印に沿って下っていくことにする。しばらく下っていくと赤ペンキは斜面を左方向へとトラバースするように私たちを導いていく。下草が繁茂していないので、歩きやすく、不快感はない。しばらく行くとペンキ印に代わって白いビニールテープが下るべき方向を示してくれるようになった。それに沿って急斜面を下っていくと標高410m地点で古い林道に出た。大きな岩が転がっていて車の進入は不可能だがしっかりした林道である。林道はここで終点となっている。
この林道は酒寄林道の支線で、5分ほど下っていくと舗装された筑波山中腹を一周する林道の一部を構成する鬼ヶ作林道に出ることができた。国土地理院の二万五千図の389mの標高点の箇所である。
そこからミカン園近くの駐車地点までは林道を20分ほどの歩行だった。


境界尾根も松岩尾根も良い尾根だった。改めて松岩尾根を末端から忠実に登って見たい。


みかん園上の林道(標高210m)8:24
水場(標高455m)休憩
自然研究路(標高755m)9:54
東屋休憩10:03
男体山山頂(標高870m)10:15
御幸ヶ原(標高790m)休憩10:25
松岩尾根分岐(標高660m)10:50
松岩の頭(標高610m)10:59
酒寄林道終点(標高410m)11:35
鬼ヶ作林道合流地点(標高389m)11:40
みかん園上の林道(標高210m)12:03


赤松の疎林の中に続く境界尾根の下部


ときおり大きなモミの木がある


二万五千図の自然研究路のトレースよりもはるかに正確である


ガスにけむるつつじが美しい


標高660m地点の松岩尾根への分岐点


松岩尾根を下る


松岩の頭からの展望


赤ペンキに沿って下る


酒寄林道の支線


標高210m地点に駐車