2006年 春

茨城

筑波山 V字谷

2006/04/15

イースターをむかえ、今夜は復活徹夜祭。
イースターはクリスマスイブよりももっと美しい。集まった人々それぞれが持つ数百のキャンドルの灯りが教会の中を満たす聖なる夜。
海外の多くの国々では長期休暇の時期だけれども私達家族にとっては、このささやかなハイキングが土日の貴重な楽しみの一つでもある。
従って、夕方にはカトリック西千葉教会へ行かなければならないので、近場に行こうということになり先々週に引き続いて敦子と筑波山に行くことになった。
さて、筑波山であるが、この山は太古からの信仰の山で、私自身は山登りの対象として考えたことはかつて一度もなかった。たしか25年ほど前に「岩と雪誌」にボルダー巡りが柏瀬祐之によってレポートされたことがある。戸田直樹氏らと登ったもので大きな刺激を受けたが、直後に筑波山は信仰の山ということでボルダリングは禁止され訪れることなく終わってしまった。
だから今回のハイキングもトレーニング的な位置づけというのが正直なところだった。

4月15日(土) 晴れ

7時に四街道を出発して75kmを走行し、8:50にガマ公園の市営駐車場に到着。出発の仕度をしていると隣に止まった車の人もハイキングのようで、私たちに話しかけてきた。
「今日はどちらのコースですか?」
どちらのコースといっても表参道・白雲橋コース・おたつ石コース・向場コースの四つしか知らないので、ごく普通に
「表参道を登ろうと思っています」
と答えた。
するとこの方(柏の中庭さん)は面白いコースがたくさんあると教えてくれ、しかも案内図のコピーをくれた。
この案内図は、福島さんという方が作成されたものと言うことで、幾つかを口頭で解説してくれた。
その説明の中にV字谷は少し岩登りがあるという一言があった。
何?岩登り???
面白そうである。このコースを登ることに決めた。
常に登攀用具を車に積み込んでいるので、装備にロープを追加しザックの中に入れる。すると中庭さんは谷の登り口まで案内してくれるという。
9:15梅林の中を突っ切って登り始める。
行ってみてわかったが中庭さんの案内がなければ登り口まで到達することは出来なかったろう。それほどわかりづらい。
出発してから40分、9:55V字谷の分岐点に到着した。
ここから浅い谷をさかのぼっていくが、ところどころにペンキの印があるものの落ち葉が斜面を多いつくし、この先に困難な岩場があるとは想像しにくい。
最初は少しながら水も流れていたが、すぐに水は涸れて谷筋の判然としない斜面を我慢して登っていく。
中庭さんに言われたとおり、最初の二股は左へ、次の二股は右へ登っていく。
すると涸れていた沢に水が流れ始めた。10:20まもなく前方にV字型のゴルジュが見える。
まったく期待していなかっただけに、歓声を上げて感動する。
すぐに小さな滝があり、水流の左にある樹木に抱きつくようにして登る。
続く滝は水に濡れぬようにオポジッションなどを使って登る。
10:35これを過ぎると5mの涸れ滝があって、その下が絶好の休憩地になってたので、大休止。
ここから再び、谷筋の判然としない斜面となるが、まっすぐに登っていく。
途中で二回ほど不明瞭な踏み跡が沢を横切るが、これを無視して更に登っていく。
11:20斜面はぬかるんで登りづらいが辛抱して登っていくとカタクリの花の咲く斜面にたどり着いた。この斜面の上で明瞭な登山道が沢を横切っている。
この登山道を斜面に向って左手へとトラバースしていく。このトラバースの道にもカタクリの花があちらこちらで咲いている。
5分ほど歩くと富士見台の東屋に到着。ここで昼食。湯を沸かしてカップ麺を食べる。あたりは笹に覆われ、ところどころにカタクリの花の咲く素晴らしいところだ。ちょっと下ったところには岩が岬のように突き出した展望台があって、関東平野を一望することが出来る。
下山は、峠尾根を選択する。
12:15展望台の脇にある踏み跡から本当に適当に下り始める。ほとんど勘である。
これが本当に峠尾根なのかどうかはわからないが、葉を落としきった落葉樹の明るい尾根を下っていく。道にはスミレやボケが咲いて、野バラや山吹も咲いている。所々で落ち葉が登山道を隠してしまって、道を失いかけそうになるが、慎重に見極めつつ下っていく。
13:12舗装された林道に出た。
林道を斜面を背にして左方面へ下っていく。
下っていくと山桜があちこちに咲いている。筑波山にはモミの大木が多く、その緑とコントラストを描きながらピンクの塊が斜面を覆っているのである。これは見事で、敦子と二人でしばらくうっとりとしてしまう。
吹いてくる風も心地よくさわやかで、最高の気分だ。
敦子も
「お父さん、すごいね。このまま帰るのがもったいないね、お母さんも"とんチ"も"もとチ"も連れてくればよかったなぁ」
という。同感だ。こんなに素晴らしい筑波山あるとは知らなかったし、これからが楽しみだ。
ガマ公園の市営駐車場を14時に出発し、四街道の自宅に帰りついたのは15時50分。19時から始まる復活徹夜祭にはシャワーを浴びても余裕で間に合った。