2004年冬

栃木県 足尾 松木川

黒沢

2004/2/14
高野伸也、小堀哲夫、西村邦彦、尾崎徹、伊能敦、上田益孝、土橋敬司、賀来素明

今回のアイスクライミングも全てを尾崎さんがお膳立ててくれたもの。何も考える必要はない。他のメンバーはオンブにダッコでついていくだけ。
林道をおしゃべりしながら歩いていると尾崎さんは
「今年の12月は黄蓮谷右俣へ行こう」と上田さんと私を誘う。
黒戸尾根を冬靴で登ることを想像するだけでしり込みしてしまう上田さんと私。
尾崎さんはすでに右俣も左俣もトレースしているのだが、西村さんが左俣のフリーソロはしているが右俣はまだ登っていないので登らせてあげたいのだという。だから一緒に行こうというのだ。本当に頭が下がる。

みんなとおしゃべりをしながら歩いていく林道は楽しく、下着一枚になって春の陽を感じながら歩く。
林道の雪も融けて温かな土から水蒸気が立ちのぼり、ところどころに登る残雪の表面もうっすらと茶色になっている。
高野・小堀・西村・尾崎が一泊二日、伊能・上田・土橋・賀来が日帰り。
一泊組の本命は明日の「無名沢」のようで、今日は足慣らしということで黒沢に行くことになる。「宇都宮勤労者山の会」も黒沢に入っているはずなので再会できると嬉しくなってくる。黒沢に行くと「宇都宮勤労者山の会」の安藤さんや松本さんたちが登攀を終えて下降してきたところだった。森さんが撮影してくれた私の写真を安藤さんから手渡される。
私達は「尾崎・西村」「高野・小堀・上田」「伊能・土橋・賀来」の三パーティーに分かれて遊ぶ。
伊能さんとはかつて一緒に銚子犬吠埼の岩場を開拓した仲間で10年ぶりくらいの再会。奥様には赤ん坊のころの我が家の子供達を岩場の下であやしていただいた。
一方、土橋師匠は1960年代に衝立のダイレクトカンテやコップ状岩壁のソロクライミングを行っている雲の上のような存在だが、ダブルアックスは初めてのはずだ。師匠はところどころアックス一本でスイスイ登る。さすがというべきだろう。
気温が高く氷の表面が水を含んでやわらかくなっており、アックスのピックが氷を割らずに食い込んでくれるので登りやすかった。
二月も中旬なると足尾でのアイスクライミングもシーズンオフだという。五週連続となる足尾通いもそろそろ終りなのかもしれない。
15時過ぎ、ベルグラで遊び続けている宿泊組みに別れを告げ帰路についた。

道具のこと
西村さんのハンドメイドアックスを使わせてもらった。
バイパー、クオークなど既製品とは異次元の性能。打ち込むのではなく、氷に引っ掛けて登る。引っ掛けるだけと言うと「そんなんで大丈夫かぁ」と不安になろうが不安にならない。手がピックの先端を感じるのである。しなやかな作りになっているのでピック先端の微妙な食い込みを感じることが出来るのだ。この感覚をなんと表現していいのか「素肌感覚」とでも言ったらよいのだろうか。強く、深く打ち込む必要がないからアックスが重い必要はなく超軽量。スイングも小ぶりでいいのでスイング時にバランスを崩すこともない。引っ掛けているだけだからピックの回収もとても楽。全てに軽快だから上半身の力を抜いて登ることが出来る。しかもリーシュもハンドメイドでしっかり固定できて着脱もワンタッチ。まったく夢のようなアックスだ。
アイゼンも更に改良されていた。
全てのアイゼンはインサイドやアウトサイドで立ちこむことが出来ない。(以前TOPの製品でアウトサイドに爪のあるアイゼンが販売されていたことがありましたネ)
常にトゥで壁に正対して立つ。フリークライミングのように登ってみたいとは誰もが思うことだろう。先月にはなかった一本の爪がモノポイントの内側に斜め横を向くように取り付けられていた。この改良によってインサイドで立ちこむことが出来るようになったわけだ。
西村さんのギアを知ってしまうと既存のメーカー品を使うのがバカらしくなってくる。それは既存のギアはまだまだクライマーの要望を満たしておらず改良の余地があるということなのだろう。

またもや大間抜け
銅親水公園のゲートには9時半ころ到着。車から降りて背伸びをして深呼吸。さて、スパッツでもつけようかなぁとザックの中を探ると衣類一式が入っているスタッフバッグがない。オーバーズボンがなくとも登れるが手袋がなくては登れない。銅親水公園のゲートで敗退の危機。
ところが土橋師匠が予備の手袋とオーバーズボンを持っていた。なんという奇跡。師匠ありがとうございます。
先月は食糧を忘れたし、今回は衣類を忘れた。もう自分自身が情けない。トホホ。

師匠との極秘計画
二ノ宮道の駅で上田さん・伊能さんと別れ、師匠と二人で四街道へと向かう。車の中で夏の極秘計画をいくつか立てた。ウシシ・・・楽しいだろうな。いけるといいナ。

2月14日 快晴

いつもの通りの西村と尾崎
小堀と上田

写真提供:土橋敬司
F3を登る高野
小堀・高野の両名で交互にリードしたようだ
爪の磨耗したチタネスクでF3を登る土橋師匠

写真提供:土橋敬司
20年近く前のアイゼンで登る伊能

写真提供:土橋敬司
一応全てを登り終わってからトップロープをかけて、ベルグラ状の壁を何度も反復して登る尾崎
一泊組の高野・小堀・西村・尾崎のキャンプ地
最終ゲート先のジャンダルムが対岸に見える草地。
水場も近く最高のロケーションである。
帰りがけに、上田推奨の今市の「正嗣(まさし)」へ立ち寄る。
ぎょうざ専門店の名に恥じぬメニュー。
餃子のみ。ビールもないしご飯もない。
タハハ・・・まいったなぁこりゃ。
三人前でなんと510円という安さ。
ラーメン屋のギョーザは中がスカスカだったりする。その感覚で三人前を頼んでしまった。
ここの餃子は中に具がしっかりと入っているので見た目以上にボリュームがある。
量が多くて食べ尽くすのは辛かった。
二人前が適量だったらしい。
ゲップ!

写真提供:尾崎徹
★一泊組のその後★

見よ、前途有望な若人二人が人っ子一人いなくなった氷瀑で遊んでいる。


「道を踏み外さねば良いのだが・・・」とは上田のつぶやき

「もう手遅れじゃぁないのかなぁ」とは賀来のため息

「尾崎さんは彼らを息子と思ってるんですよ」とは土橋師匠のお言葉

写真提供:尾崎徹
★一泊組のその後★

流木で焚き火をしたとのこと

写真提供:尾崎徹
★一泊組のその後★

記録を見ることも稀な「無名沢」
夏小屋沢のF3を上回る二本の滝があり良好だったという。

降りしきる雪がいい。